また、A型事業所を運営する会社とその親会社、B型事業所を開設する会社の登記などから、一部の役員の名前が重なることが判明。B型事業所の会社は6月にできたばかりであることもわかった。「最初から組織ぐるみで、B型で働かせるために障害者を集めたのではないか」という疑いが強まったという。
タミオさんらがこうした疑念を抱くのには、もうひとつある事情がある。
今年4月から、事業で得た収益から給料を支払えないA型事業所に対する報酬が大幅に引き下げられるようになったのだ。国からの報酬や助成金目当てに事業を始める悪質業者の排除が狙いだったが、一方で全国で多くの事業所が閉鎖、大勢の利用者が解雇される事態が生じることにもなった。
タミオさんは「経営が厳しくなるとわかっていながらA型をオープンしてとっとと閉鎖。その陰でB型をつくるための会社をつくってるんですよ。どう考えてもおかしい」と語気を強める。
行政機関は動いてくれない
しかし、幕切れはあっけなかった。タミオさんは事業所閉鎖の通告から数日後、このA型事業所を辞めた。きっかけは、タミオさんらの行動をとがめた職員と口論になった際に、「利用者同士の連絡先交換は禁止という規則を破っている」と叱責されたことだった。
たしかに事業所には「個人の連絡先の交換は禁止」という規則があった。一方で車を持っていたタミオさんは近所に住む利用者と相乗り通勤をしていた。駐車場代を折半するためだ。職員は頭に血が上ったのか、事業所の閉鎖問題とは何の関係もない規則のことを唐突に持ち出し「連絡を取りあっただろう」と糾弾してきたのだという。
そもそも連絡先交換の禁止など人権侵害ではないのか。タミオさんは職員と激しい言い争いの末、そのまま退職。「自分のメンタルを守ることを優先しました」と振り返る。
その後も行政機関には足を運んだが、結局「権限がない」などとして、どこも動いてはくれなかったという。タミオさんは「役所が半年も持たないような事業所の開設を認めていることに、一番驚きました」とあきれる。
情報を提供した地元のテレビ局や新聞社の支局も、ニュースとして扱うことは難しいと判断したのか、反応は鈍かったという。
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