障害者支援「A型事業所」からB型に流す悪質手口 「個人の連絡先の交換は禁止」という規則が横行

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「要するに倒産、解雇。B型事業所になれば収入は下がるに決まってる。入ってすぐに閉鎖なんて、履歴書を汚しにいっただけやないかと怒りがわきました。A型で釣った人を、安く使えるB型に流すとか、まるでだますような手口じゃないかとも思いました」

同意書
事業所閉鎖が伝えられたときに渡された同意書。B型に移ることが当たり前であるかのような説明に違和感を覚えた利用者は少なくなかったという(写真:タミオさん提供)

雇用契約を結ばないB型事業所

A型で釣ってB型に流す、とはどういう意味か。ここで就労継続支援A型事業所と同B型事業所の違いについて説明しよう。

就労継続支援事業とは、障害のある人などが支援を受けながら就労に必要なスキルを身に付ける障害福祉サービスのこと。事業所には国から毎月、報酬(給付金)が支給される。A型とB型の違いは雇用契約の有無。雇用契約を結ぶA型事業所の利用者は最低賃金の保障や有給休暇の取得、労災保険・雇用保険への加入といった労働者を守るための法律が適用される。これに対し雇用契約を結ばないB型事業所の利用者は関連法の適用外。基本的には雇用契約を結んで働くことが難しい人が対象で、支払われるのは給料ではなく工賃という扱いとなる。

厚生労働省の調べでは、2022年度のA型事業所の平均給料は月8万3551円なのに対し、B型事業所の工賃は同1万7031円。工賃を時給換算するとわずか243円である。中には雇用契約がないことをいいことに、B型事業所で“労働搾取”にはしる悪質な業者もいる。

タミオさん
「障害のある人をA型で釣ってB型で安く使うつもりなのでは」。タミオさんら利用者の間では事業所に対する不信感が募ったという(写真:タミオさん提供)

早々にB型事業所に移るよう持ち掛けてきた事業所に対してタミオさんが不信感を抱いたのはこうした背景があるためだ。タミオさんが憤る。

「仕事は箱折りやお菓子の検品でしたが、単価が低くて採算は取れてへんやろうと思ってたんです。だから『僕が営業して仕事をとってきましょか』と言うても、職員は『必要ない』という。経営努力もせんと、『もうかれへんからA型やめて、給料を払わなくてもいいB型にします』なんてことがまかり通ったら、なんでもありになってしまいますよ」

案の定、別の利用者から「社長は『B型では最低賃金を保障し続けることはできない』と言っている」と聞いた。この利用者が「今回の話は解雇通告なのか、退職勧奨なのか」と社長を問い詰めたところ、「案内です」という意味不明の答えが返ってきたという。

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