私の取材実感では、A型事業所の利用者の中にはその給料で生計を立てている人が少なくない。タミオさんもそうだ。彼らにとって、事業所の閉鎖は失業と同じことだ。
B型で働かせるために集めた?
タミオさんは高齢者の入居施設で働いていたときにうつ病を発症した。正社員だったが、年収は約250万円。夜勤も多く、仕事に見合った待遇とはいいがたかった。発症を機に退職し、一時的に生活保護を利用した後、数年前から複数のA型事業所で働いてきたという。現在の収入はA型事業所の給料と障害年金を合わせて13万円ほど。持ち家なのでなんとか暮らしていける水準だ。
タミオさんは「A型では有休を使って病院に行くこともできましたが、B型ではそれもできなくなります」と訴える。タミオさんにとって、A型かB型かの違いは大きい。「案内」などという言葉でお茶を濁されてはたまったものではない。
また、「利用者の中には軽い知的障害のある人もおりました。ちゃんと理解しないまま同意書にサインしてしまう人もおるんやないか」と心配にもなったという。
このため、タミオさんは数名の利用者と一緒に事業所側に対し、全員の前であらためて説明会を開くよう求めた。同時に所管の自治体や労働基準監督署、労働局などに足を運び、一方的に事業所閉鎖を通告されたことなどを伝えた。会社の実態を調べるために法人登記を取ったり、地元のメディアや弁護士に相談を持ち掛けたりもしたという。
するとタミオさんらの不信感を募らせる事実が次々と明らかになっていく。
まず、自治体担当者からは、事業所側から閉鎖、開設の報告は一切受けてないと教えられた。新規開設には遅くても3カ月前の連絡が必要なので、12月のオープンは不可能。事業者側はオープンのめども立っていないB型事業所への“移籍”を迫ったことになる。
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