現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
不要な冷蔵庫を「生活保護費」から買わされた
千葉県内の小さな不動産業者の事務所。内見の代わりに、パソコンでアパートの室内を見せてもらっていたときのことだ。キッチンに備え付けの冷蔵庫があるではないか――。ちょうど冷蔵庫や布団など家具・家電の5点セット計3万7000円分を購入する契約書にサインを求められていたソウマさん(仮名、59歳)は「冷蔵庫はいらないです」と申し出た。しかし、スタッフからは「5点セットじゃないとダメ」とはねつけられたという。
このときネットカフェ暮らしだったソウマさんの所持金は約700円。すでに不動産業者を通し、最寄りの福祉事務所に生活保護を申請する“予約”も取り付けてもらっていた。
購入を拒めば、路上生活になるしかない。そう懸念したソウマさんは「冷蔵庫2つも要らないのに……」と思いつつもサイン。業者に対して不信感が芽生えた瞬間だった。
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