長期感染については4月18日、アメリカ科学振興協会(AAAS)が発行する科学ニュースリリース配信プラットフォーム「EurekAlert!」に、613日間、感染が継続した72才の免疫不全の男性のケースが紹介された。
7月3日にはまた、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、感染から約2年が経過したコロナ後遺症患者の腸から複製可能(生きていることを意味する)なコロナウイルスRNAを検出したと報告した。
円形脱毛症などの合併症も発生
コロナは単純な風邪とは違う。たとえウイルスが消えても、免疫異常は長期にわたって続く。このような状態は、さまざまな合併症を引き起こす。
3月5日、マサチューセッツ工科大学と韓国の京畿大学校を中心とした研究チームは、日本と韓国の約2200万人のデータを分析し、コロナ感染者は非感染者と比べて、ある自己免疫性疾患の発症リスクが、1.25倍増加すると『アメリカ内科学会誌』で報告した。リスクは、感染が重症で長期化するほど上がるという。
1月には韓国の全北大学校医科大学の研究チームが、コロナ感染者は円形脱毛症のリスクが1.82倍高まるとの報告を『アメリカ医師会誌(JAMA)皮膚科版』で発表した。円形脱毛症は典型的な免疫疾患だ。コロナ感染に伴って増えてもおかしくない。
話をコロナ後遺症に戻そう。
長期感染が関係しているのなら、治療薬が有効かもしれない。この問題についても、いくつかの研究が発表されている。
1月4日、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、『臨床ウイルス学雑誌』に発表したコロナ感染者4684人を対象とした研究によれば、治療薬パキロビッドを服用した988人と服用しなかった3696人を比較したところ、後遺症の発症率は16%と14%で大差なかった。
同様の研究成果は、スタンフォード大学を中心とした研究チームからも報告されている。治療薬で後遺症を予防することは難しそうだ。
ワクチンはどうだろうか。こちらは有望そうだ。これまでの研究で、後遺症のリスクを大幅に下げることがわかっている。
前述したセントルイス退役軍人研究教育財団らの研究チームが行った研究では、ワクチンを打っていない人と比べて、デルタ株では44%、オミクロン株では55%後遺症の発症を減らしていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら