「セブン&アイ」創業家の巨額買収を実現する"秘策" 常識的には難しい巨額MBOの突破口を考える

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カナダのACTがセブン&アイの買収を持ちかけているのもこの視点で、彼らが本当に欲しいのはセブンが持つ北米のコンビニ事業とみられています。そして経営陣が最後まで守りたいのはそこではありません。

だとしたら創業家がMBOでセブン&アイを7兆円で買収して、その日のうちに、北米のコンビニ事業をACTに5兆円で売ったらどうなるでしょう。彼らが本当に欲しいものだけくれてやるのです。ACTとの間で水面下で売却交渉を進めておけばいたずらに買収総額が跳ね上がることもありません。

創業家は北米事業売却直後に5兆円を金融機関に返済して、買収コストはわずか2兆円で済むことになります。手元に残るのはイトーヨーカドーと日本・アジアのセブンイレブンの経営権です。

最後に残るのは「アイ」だけ

ここまでの「絵」を描いたうえで、白馬の騎士としての伊藤忠には、「リスクは7兆円ではなく2兆円だから経営権までは渡さない」と条件を出します。持ち株は創業家と経営陣が過半を持つ代わりに、取引関係は全面的に伊藤忠に寄せていくという条件です。伊藤忠商事からすれば国内の小売事業取引をセブンとファミマで倍増させられますから、ビジネスとしてはのめる着地点です。

ただ北米のセブン-イレブンを売却しますから社名から「セブン」は消えてしまうかもしれません。最後に残るのは「アイ」だけです。でも「アイ」さえ残ればそれでいいと創業家は考えているのかもしれません。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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