大衆幻想によって日本は動かされている--『革新幻想の戦後史』を書いた竹内洋氏(関西大学教授、京都大学名誉教授)に聞く

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とかく、国民の皆さんとか視聴者の皆さんと言うが、人々はマイクを向けられると、自分が考えていることを言うのではなくて、こういう場合はこう言うべきではないかと考え、答えている。大衆は本当は特徴がなく、その意見も幻想ではないか。実態としては、こういうことは言ったらいけないといった「大衆目線」がものすごく強い。「上から目線がいけない」というのはまさにそれを表した表現なのではないか。

──日本人は一つの方向に流されがちですか。

個人主義だったら、ほかの人と同じではいけないとなる。欧米に行っていつも思うが、レストランで注文するとき、彼らは「私も」とは言わない。個人主義の病理かと思うほど、違うことを言う。これに対して日本人は「ミーツー社会」。

──でも、一方で、欧米の人は連帯も求めます。

個人主義でも、キリスト教などの共通項があるから利己主義ではない。日本人は個人主義マイナスキリスト教だからエゴイズムになる。日本の個人主義者は自己中(心的)であって、博愛がない。他者への感受性という意味で空気を読むのはいいが、危険性も大いにある。

たけうち・よう
1942年新潟県に生まれる。京都大学教育学部を卒業。京大大学院教育学研究科博士後期課程を単位取得満期退学。京大大学院教育学研究科教授などを経て、関西大学人間健康学部教授。専攻は歴史社会学、教育社会学。著書に『日本のメリトクラシー』『学歴貴族の栄光と挫折』『教養主義の没落』など。

(聞き手:塚田紀史 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2012年1月7日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『革新幻想の戦後史』 中央公論新社 2940円 546ページ


  
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