マスク氏「3割歳出削減」の大ナタと八方美人の日本 アメリカとは異なる様相で「民主主義が揺らぐ」

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10月27日に衆議院選挙が行われたが、ほとんどすべての政党が、歳出を増やすと声高に主張した。「歳出を増やす」といっさい言わずに「無駄があるからもっと削減できる」と主張した政党は皆無といってよい。また、負担軽減を主張するとともに歳出削減も主張する政党も皆無といってよい。

日本の政党は、減税を唱えても、それと同規模の歳出削減には言及しない。あるいは、歳出増と合わせて負担増に言及することもない。

他方、アメリカでは、歳出を増やす提案を出す傾向は民主党のほうが強いが、連邦政府の債務上限規定を盾に共和党が牽制するという場面がしばしばある。共和党にとっては、債務残高がむやみに増えることは認めがたいことだからでもある。

これをみると、どちらの国のほうが、民主主義の危機に直面しているのか、他人事とはいえないだろう。

日本の民主主義の危機は財政基盤

確かに、民主主義の意思決定過程の正当性について揺らぐことについて、日本ではその懸念はないがアメリカではある。しかし、民主主義の礎となる財政基盤について揺らぐことについて、アメリカには懸念がないが日本にはある。

政権交代に慣れていない日本では、与党は八方美人的にどの有権者にも歳出増や負担減を振りまいて支持を集めようとしたがる。それは、民主党政権も、第2次以降の安倍晋三内閣の後でもそうである。そのような姿勢では、歳出は膨張する一方だし、それに見合うだけの税収を確保することもままならない。

衆議院で自民党と公明党だけで過半数を確保できない政治状況になっただけに、その懸念はますます高まっている。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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