イーロン・マスクの130日(下)トランプはMAGAを選び、テクノ・リバタリアンたちを捨てた

「マスク氏の130日」は、トランプ大統領の絶対的な支援に始まり、決裂で終わった。5月30日にホワイトハウスで開かれたトランプ大統領とマスク氏の共同記者会見でトランプ大統領は「信じられないほどの奉仕をした」と、マスク氏にホワイトハウスの「金の鍵」を送った。マスク氏も「自分の退任はDOGEの終わりではなく、始まりである」と語り、「自分はトランプ大統領の顧問にとどまる」と付け加えた。
しかし、そんな社交辞令はすぐに吹き飛んだ。発端は2026年度予算調整法案だ。5月22日に下院を通過し、上院で審議が始まった。トランプ大統領は同予算案を「大きな美しい予算(One Big Beautiful Bill Act)」と呼び、共和党に同法案の成立を促すが、大型減税や歳出増が含まれており、財政赤字の拡大が懸念されている。
「大きな美しい予算」巡り応酬
6月3日にマスク氏は『X』に「申し訳ないが、私はこの予算案にがまんできない。この巨額で、とんでもないバラマキ案が盛り込まれた歳出法案は胸糞が悪くなるほど醜悪である」と批判するコメントを掲載した。さらに6月6日に再び『X』で、「あの予算案に詰め込まれた山のようなむだな支出は削減すべきだ。歴史を振り返って、大きくて美しく仕上がった予算などない。予算は『デカくて醜い』か『スリムで美しい』かのどちらかだ。正しい道は『スリムで美しい予算』だ」と、さらに激しい調子でトランプ大統領と共和党指導部を批判した。
マスク氏にしてみれば、DOGEが懸命に歳出削減に取り組んでいるのに、トランプ大統領が財政赤字を拡大する大型予算を支持するのは耐えられないのだろう。マスク氏は、連邦議会議員に予算案を否決するように求め、有権者には地元選出の議員に法案に反対するよう圧力をかけようと呼び掛けた。
これに対してホワイトハウスは「大統領は意見を変えない」と、マスク氏の批判を無視した。スティーブン・ミラー次席補佐官も「予算案は選挙公約を盛り込んだものだ」と、いまさらマスク氏が予算案を批判するのは筋違いだと反論している。
トランプ大統領も「イーロンの批判に非常に驚いた。彼には失望した。予算案に電気自動車に対する税額控除の廃止が盛り込まれているので、彼は腹を立てているのだろう」と記者団に語った。さらに「予算案で歳出を減らす最も簡単な方法は、イーロンが受けている連邦政府の補助金や契約を解除することだ」と、脅しに近い発言もしている。
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