茶室をリノベし自分空間に、アラ還男性の理想郷 旅立つ前に夫が20歳下妻に贈った「終の棲家」

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ご夫婦の住まいは、かなり以前に購入した中古住宅で、公道から階段を20段下がった場所にあった。窪地なので日中でも、あまり陽が当たらない。ちょっと部屋の内部も傷んでいる。

打ち合わせは、ずっと妻であるTさんだけの参加だった。

何度目かのとき打ち明けられたのは、「実は主人は84歳と高齢で、現在は入院中なのです。退院後はおそらく足が思うように動かなくなるので、外階段の上り下りができなくなる可能性が高いでしょう」とのこと。

たまたま夫が所有する雑木林があり、伐採して駐車場にしたばかり。海沿いで陽もよく当たる場所だったことから、そちらにバリアフリー住宅を建てれば解決するのではないかと考えたそう。

夫からは「好きにしていいよ」

コンパクトな平屋はバリアフリー化するのに最適だ。

建築費は当時で2500万円ほど。貯蓄でなんとか工面できる金額だったため、夫からは「あなたの好きなようにしていいよ」とGOサインが出た。こうして超特急で設計を進め、工務店さんにも最速でどうにか頼む!と、見積もりをしてもらった。

数カ月後、建築請負契約の締結のため、仮退院されたTさんのご主人にお会いした。

契約のサインをいただいたあと、少しだけ雑談をする時間があったが、聞けばお2人には子どもはなく、事実婚とのこと。話すほどに夫からTさんへのこれまでの感謝の気持ちが自然と伝わってきた。

工事は自分史上最速で進んだ。

完成した「60ハウス」は、勾配天井がリビングからバルコニーまでつながる開放的な空間が特徴だ。

リビングから入れる洗面脱衣室を通り過ぎれば、そこは夫のプライベートルーム。座イスのように背もたれが変化する電動ベッドから、窓越しに海を見下ろすことができる。また、車イスでも移動がしやすいよう、部屋から直接トイレにも行ける配置とした。

60ハウス
リビングの風景。本来の「60ハウス」の間取りよりも余裕のある設計としている写真:『人気建築家と考える50代からの家』より)
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