「中央銀行」が金利を操作するのはなんのためか 雇用や経済成長に多大な影響を与える金利の話

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ハイパーインフレのリスクを回避するため、当初は通貨と金の交換比率を固定する金本位制の採用が進んだ。しかしこれは得策ではないことがやがてわかった。

世界の金の採掘のペースと、金本位制を導入した国の経済成長のペースとが釣り合う保証はどこにもなかったからだ。世界のどこかで広大な金鉱が発見されたとき、わたしたちは自国の通貨の価値が下がることを望むだろうか。

1970年代初頭に金本位制が終焉を迎えると、各国は人口の増加や生活水準の向上に合わせて、通貨の供給量を増やせるようになった。

また主要経済大国は互いの通貨のつながりも切り離し始め、固定為替レートから、通貨の需給関係で為替レートが決まる変動為替レートへと切り替えた。

中央銀行への政治的な干渉

しかし中央銀行が政治家の支配下に置かれていた時代には、インフレの管理で考慮されたのは経済的な要素だけではなかった。

政権は選挙が近づくと、にわか景気を作り出す誘惑に駆られがちだった。その結果、選挙後には景気が悪化することが多かった。

政治家たちはそのようなにわか景気のおかげで選挙に勝てたが、多くの一般の労働者たちは選挙後の不況のせいで職を失った。

景気の推移を表したグラフを見れば選挙があった年がわかるほど、この問題は顕著だった。

戦後の数十年にわたり、米国ではたいてい選挙の翌年の経済成長率が選挙の年の経済成長率を下回っている。同様のパターンはヨーロッパの国々でも見られた。

金利の設定への政治的な干渉はときに直接的に行われたが、目立たない形で行われることもあった。

1972年、インフレの加速に直面した米国のリチャード・ニクソン大統領は、連邦準備制度理事会が金利を引き上げて経済を鈍化させるのではないかという懸念を抱いた。

このときニクソンは、連邦準備制度理事会に圧力をかけようとして、連邦準備制度理事会議長のアーサー・バーンズが給与の50%引き上げを要求しているという虚偽の情報を流した。

このような「政治的な景気循環」が明るみに出たことで、状況は変わり始めた。財政政策は引き続き、選挙で選ばれた政治家によって決められたが、金融政策は中央銀行の独自の判断で実施されるようになった。

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