逆に、金利が高いと、借金の魅力は薄れる。人々は今はがまんして、あとで買おうとするようになるので、経済活動は停滞する。
中央銀行にとって、金利は自動車のブレーキとアクセルのようなものだ。適切なタイミングで正しいペダルを踏めば、目的地に滞りなく到達することができる。
インフレ率だけを目標にしている中央銀行もあるが、一方で、失業率など、別の指標も目標にしている中央銀行もある。
ただ結果的には、両者に大差はない。ビル・フィリップス(1949年に送水ポンプを使って経済の仕組みを表す水理模型を考案した人物)の研究により、短期的にはインフレと失業のあいだに強い結びつきがあることがわかっている。
したがって、中央銀行がインフレ率の達成に重点を置けば、おのずと雇用や経済成長にも影響を与えることになる。目的は、熱くなりすぎも、冷めすぎもしない経済状態、いわゆる「適温経済(ゴルディロックス経済)」を維持することにある。
中央銀行はうまくやっているのか?
では、インフレ目標や中央銀行の独立は成功しているのか。インフレに関しては、答えはイエスだ。
1970年代のオイルショック後、米国のインフレ率は10年にわたり、6%を超え、ピーク時には14%(1980年)に達した。それが1990年代から2000年代にかけては低く抑えられた。
同様のことは英国と日本でも起きている。どちらの国でも1970年代にはインフレ率が最大で20% を超えた。それがやはり1990年代から2000年代にかけては、低い水準で安定した。
中央銀行にとって悩ましいのは、金利は人々の将来の行動に影響を及ぼすものなので、金融政策はつねに将来の予測にもとづくものになるという点だ。
連邦準備制度理事会議長の表現を借りれば、中央銀行はパーティが盛り上がってきたタイミングで、カクテルがなみなみと入ったパンチボウルをさっとテーブルから下げなくてはならない。
21世紀に入ると、適切なバランスを取ろうとする中央銀行はまた別の難題を突きつけられることになる。
(翻訳:黒輪篤嗣)
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