「がん免疫療法」うたう自由診療に潜む本当の怖さ 日本人は「あやしい医療」の実態を知らなすぎる
このような臨床試験は、通常であれば、国に届け出がなされ、許可を受ける必要があり、施設での厳密な倫理委員会でも審議する必要がある。
もちろん、臨床試験を受ける患者には厳格なインフォームド・コンセントを受けてもらう必要があり、説明内容には、「あくまでも研究であり、効果はまだほとんど期待できるようなものではない」ことが記載されなければならない。
第1相試験が厳格に行われ、安全性がクリアされると、第2相試験、第3相試験と、より多くの患者に対して幅広く臨床試験が行われる。
この段階になっても「あくまでも研究であり、効果はまだほとんど期待できるようなものではない」とのインフォームド・コンセントがなされる。なぜなら、人間に対する有効性を証明するものだからだ。
そして、第3相試験(ランダム化比較試験とも呼ばれ、従来の標準治療と有効性を比較する臨床試験)をクリアして、初めて有効性が証明され、承認、保険適応となる。
このような臨床試験は世界中で行われているが、臨床試験の道のりは厳しく、第1相試験段階で成功した物質が、薬として承認される可能性は3%と非常に低い。それだけ、人間に効く治療薬を開発するのは難しいということである。
安全性も有効性も未知な製品化もされていない物質が、臨床試験でもなく、勝手に患者に投与されるのは、人体実験といってもよいレベルの行為であり、医療倫理的にも大きな問題であると筆者は思っている。
がんの自由診療がはびこる原因
本来であれば、未知の治療は厳密な臨床試験が行われるべきである。
だが、このような自由診療が“医師の裁量権”の名のまま野放し状態になり、ほとんど規制されていない。これが非倫理的、非科学的な自由診療がはびこった背景にある。
患者は藁にもすがる思いで治療を受けるため、“お金はいくらかかっても可能性があるなら“といくらでもお金を出す。筆者の患者にも、このような自由診療に1000万円以上費やした人がいる。
患者側の弱みにつけ込んで高額の医療費を自由に設定でき、利益率が高いことから、美容系のクリニックががん自由診療経営に乗り出しているケースもある。
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