JR西日本、「3Dプリンター」で駅舎建設の現実味 和歌山で実証実験、コスト大幅削減を目指す

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セレンディクスは、2018年8月に小間裕康氏と飯田国大氏によって設立された比較的若い企業。「車を買える値段で家が買える」という世界観を目指して、3Dプリンター技術を用いた小型住宅建設に取り組んでいる。

serendix10
セレンディクスの3Dプリンター住宅「serendix10」設計:CLOUDS Architecture Office(写真:セレンディクス ニュースリリース)

同社は2023年5月に長野県佐久市で初の商用物件を22時間52分で完成させるなど、超短期間での建設を実現している。「serendix10」(10平米)や「serendix50」(50平米)などの住宅モデルを開発し、球体構造の住宅を24時間以内に建築することを目指している。さらに、「100平米 300万円」という低コストの住宅販売を目標に掲げている。

和歌山エリアで実証実験を計画

セレンディクスとの提携に基づく新駅の実証実験は、JR西日本の和歌山エリアで計画されている。2025年の春までをめどにローカル線の1駅を3Dプリンターで建設し、効果を検証する。成果が得られれば、この技術はほかのエリアへと横展開する方針という。

セレンディクスの技術をJR西日本の鉄道施設建設に応用することで、工期の短縮やコスト削減が期待される。これは、JR西日本が直面している労働力不足の問題に対する一つの対策となる可能性がある。

また、従来工法では難しかった形状の実現も可能になるかもしれない。これにより、駅のシンプル化を進めながらも、機能的な駅舎の設計が可能になる。

JR西日本 3Dプリンター
コンクリートを扱える3Dプリンターを有する(写真:セレンディクス)

最大のメリットは、電車の運行に影響を与えずに建設作業を行える点だ。3Dプリンター技術を用いれば、駅舎の主要部分を別の場所で事前に製作し、現地に運んで設置するだけで済む。現場での作業時間を大幅に削減でき、電車の運行への影響を最小限に抑えられるのだ。

従来のシンプルな駅の建設でもプレキャスト工法(あらかじめ工場で部材を製造し、現場で組み立てる方法)は用いられているが、3Dプリンターを使用すれば、駅舎のほぼすべての部分をプレキャストで製作することが可能となり、現場での作業をほとんどゼロに近づけられる。従来のプレキャスト工法では難しかった複雑な形状や大型の部材も、3Dプリンターなら一体成型できるためだ。

CEATEC 2024 JR西日本
CEATEC 2024のJR西日本ブースでは、コンクリートで編まれたオブジェも展示されていた(筆者撮影)

結果として、工数の大幅な削減が実現する。現場での作業時間が短縮されるだけでなく、部材の製作過程も効率化されるため、全体的な工期の短縮とコスト削減につながる。

セレンディクスが目指す「100平米で300万円」という低コスト化の目標が駅舎でも実現すれば、厳しい経営環境にある地方路線の維持に貢献する可能性がある。また、短期間で新しい駅舎を建設できることで、地域の新たなランドマークとなり、観光資源としての価値も期待できそうだ。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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