NHK大河ドラマ「光る君へ」がスタートして、平安時代にスポットライトがあたっている。世界最古の長編物語の一つである『源氏物語』の作者として知られる、紫式部。誰もがその名を知りながらも、どんな人生を送ったかは意外と知られていない。紫式部が『源氏物語』を書くきっかけをつくったのが、藤原道長である。紫式部と藤原道長、そして二人を取り巻く人間関係はどのようなものだったのか。平安時代を生きる人々の暮らしや価値観なども合わせて、この連載で解説を行っていきたい。連載第42回は式部と道長の関係が垣間見えるエピソードを紹介する。
「陰キャ」ぶりを自虐していた割には……
「埋もれ木を折り入れたる心ばせ」
紫式部は自身の性格をそんなふうに表現している。
「埋もれ木をさらに埋めたような引っ込み思案な性格」というのだから、対人関係にかなり難があったのだろう。少なくとも、本人はそう思っていたようだ。事実、一条天皇の中宮である彰子のもとに仕えたときも、内裏での生活になじめず、すぐに実家に帰ってしまった。
それでも実家にしばしひきこもると、女房の仕事に復帰。彰子のもとで月日を重ねるうちに、段々と宮仕えにも慣れてきたようだ。とても「陰キャ」とは思えない行動もとるようになった。
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