「競争なんてしなくていい」で育つ子どもの不幸 和田秀樹「勝ち負け不要」でも社会は競争だらけ

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社会人になって現実を見れば、自分の足りなさに気づくこともあります。

私自身もそうでしたが、社会経験を積むことによってどんどん角が取れていく人も多いです。社会で成功して恵まれた環境にいるうちに気持ちの余裕が出てきて、性格が鷹揚(おうよう)になっていく人も少なくありません。

その反対に、「競争なんてしなくていい」「やさしければいい」と言われ、最初から勝負することをあきらめて育った結果、社会に出てみたら、自分の希望する職に就けないし、待遇のいい企業にも入れないという現実を知って絶望し、世間や社会に対して不満を抱くようになる可能性もあるのです。

自分に自信を持てないせいで社会でうまくやっていけないという人も、精神科医としてたくさん見てきました。

競争なんてしなくていいと言われて育った結果、社会に出てから競争社会の厳しい現実に直面する。それは、ある意味では不幸と言えるのではないでしょうか。

もちろん、その子ができないのに、厳しい競争を強いて苦しい思いをさせるのはよくありません。そのためにも、親は小さい頃から子どもの得意なことを見つけて育て、子どもに自信をつけさせる必要があるのです。

子どもの「負けん気」は伸ばしてあげて

とはいえ、子どもの気質というのはそれぞれに違います。

人に負けたら悔しいという感情を素直に表に出す子と、それほど出さない子がいます。また、表には出さないだけで悔しさを内に秘めている子もいますし、そもそもあまり悔しいと思わない子もいます。

しかし少なくとも、家でも親が「競争なんてしなくていいよ」と言っていたら、子どもの負けん気は育ちません。むしろ私は、子どもの負けん気のタネを見つけたら、どんどんそれを伸ばしてあげた方がいいと思っています。

たとえば子どもが「あの子には負けたくないな」と言ったら、親は「その気持ちは大切だよ」と子どもを応援してあげて、勝ったら一緒に喜んであげる、負けたら一緒にどうして負けたのか、次はどうしたらいいかを考えればいいのです。

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