そこそこ健康な89歳「共同生活を選んだ」深い理由 老人ホームやシェアハウスとも違う「終の住処」

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「階段の上り下りくらいで? と思う方もいるかもしれませんが、独り者の私は、結局動けなくなったら誰かの世話にならなければいけないわけです。そう遠くない将来図をきちんと考えておかないと、人生の最終章で周囲の人たちに迷惑をかけてしまいます。それは私が一番避けたいことですから。

万が一、体の自由がきかなくなってきたら、誰かに一方的にお世話になるのではなく、必要な介護サービスを受けながらも、できるだけ周りの人と助け合って自分らしく生きていきたいんです」

こうして小森さんの終の住処探しが始まった。条件は3つ。

愛猫のんちゃんと一緒に暮らせること、階段の上り下りがないこと。そして、自由に自分らしく暮らせること。

愛猫
小森さんの愛猫のんちゃん(写真:小森祥子さん提供)

自宅か施設かという2択のうち、マンションの1階に移り住むという選択肢はなかったので、介護サービス付き有料老人ホームやシルバー分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、あらゆる高齢者向け施設を見学して回った。

“そこそこ健康な一人暮らし”の高齢者にちょうどいい

入居金数千万、月額利用料数十万という高級老人ホームは設備も充実していたし、共有スペースは高級ホテルのよう。月額利用料には手厚い介護サービスが組み込まれて、さまざまなアクティビティやイベントも用意されているが……。

まず大前提として、とてもじゃないが自分の年金では入れない。だが、それ以上に痛感したのは、至れり尽くせりの受け身の暮らし方は自分には合わないということだった。

おでんせ
住宅地に位置するが、緑も多い。個室と個室の間にはこのようなスペースが設けられており、プライバシーが確保されている(撮影:尾形文繁)

年金で入れるリーズナブルな施設もずいぶん見学した。居室が7〜8畳で隣室とは壁1枚。見学中も隣室の鼻をかむ音が聞こえた。また、そのほとんどがペットの同居は不可。

サ高住は居住性がいい施設は交通の便が悪かったりする。階段の上り下りがなくても街に出るのは大変だろう。

介護サービスという安心を手に入れるためには、気ままな生活空間や住み慣れた街での暮らしなど、今まで自分が築いてきた自由な人生の諸々を手離さなければいけないのか。

“そこそこ健康な一人暮らし”の高齢者にちょうどいい住まいはどこにある? 「老後の不安」とはまるで自分との先物取引のように思えた。

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