気になるのはビラ・モデルナの“居住者”だ。
都市・建築プロジェクトプランナーの真壁智治さんは、ビラ・モデルナに40年以上仕事場を構えてきた。この仕事場を、レジデンスとオフィスの「レジデンシャルオフィス」と表現する。
「ここを拠点にどう活動するか。どう使っていくか。住まいはオンとオフを切り替えるけれど、ここはずっとオンの状態。オフィスだけだとリラックスできないでしょう。レジデンスだけでは、だらっとしちゃう。レジデンシャルオフィスのここには、ほどよい緊張感とリラックス感がある。秘密基地のような場所です」(真壁さん)
青山にある「秘密基地」
青山通りから1本入った静かな場所にある秘密基地。朝早く来る人もいれば夜遅くに戻ってくる人もいる。部屋はシンプルなワンルームだが、共用部も合わせて、空間を自分のものとして使っていく。家やオフィスだけでは満たされないものがある、画期的な場所だったと真壁さんは振り返る。
では、これまでどのような人が利用してきたのか。やはり土地柄、クリエイターが多いようだ。
「カメラマンやスタイリスト、イラストレーター、コピーライター、エッセイを書く人もいましたね。コーディネーターや建築家など、クリエイターが好んで入っていました」(真壁さん)
そして時代とともに入居する層は広がっていく。1990年代になると、音楽関係の人も増えた。サウンドクリエイターが部屋をスタジオとして使うこともあったという。
「2000年を過ぎると、今度はネイリストや理美容の個人サロン、マッサージ、アクセサリーやアパレルのショップなどが増えました。マンツーマンなのでこのスペースで十分できるわけです」(真壁さん)
ほかにも、弁護士や会計士などの事務所も入り、時代とともに利用層が多様になっている。
建物を見上げたり、上から見下ろしたり、通路で人と行き交じったり、ほかの部屋の様子が目に入ったり。部屋や棟の間にかかるブリッジからは、中庭や住戸の窓辺が見える。どこにいても人の気配が感じられる。
中庭とブリッジを介して建つビラ・モデルナでは、“見る・見られる関係”、「共有感覚」が育まれると真壁さんは語る。
「一緒に使っている、みんなで過ごしているという、ゆるい連帯。みんなが気持ちよく集まって暮らすという意識が、デザインを介して生まれているのです」(真壁さん)
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