完成当時はラブホテルと言われたことも
東京メトロ東西線の早稲田駅を降りて3分ほど歩くと、圧倒的な存在感を放つ建物が見えてくる。早稲田大学の大隈講堂から200mほどの距離にある交差点。その角に円柱のデコラティブな塔がそびえ立っている。遠くから眺めるとデコレーションケーキのようだ。
この建物は「ドラード和世陀(わせだ)」という名の集合住宅である。設計は「日本のガウディ」と呼ばれる建築家の梵寿綱(ぼんじゅこう)さんによるものだ(前編はこちら)。1983年の完成時の反響について、生前のオーナーと面識があり、ドラード和世陀の1階に「ドラードギャラリー」と「ドラードサロン」を構える小原聖史さんに話を聞いた。
「オーナーが健在のころに竣工当時の話を聞いたことがあります。まさかここまでゴテゴテになるとは思っていなかったようで、除幕して本当に腰を抜かしたそうです。最初はびっくりしたようですが、『だんだん慣れてきた』なんて言っていましたよ」(小原さん)
そんななかで梵さんにとっては作って終わりではなかった。この分譲住宅を売らなければならない使命があったからだ。そこで雑誌『ぴあ』に無料の3行広告を出すことに決めた。
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