「引き渡しの前にアーティストや職人の作品発表も兼ねた建物の展覧会を開こうと考え、その告知を出したんです。そうしたら『ぴあ』が面白いと思ったのか、巻頭の枠に書いてくれたわけです。それで火がついちゃった。朝から人が並んじゃって、馬場下の交番から何ごとかと電話が入りましたもん」(梵さん)
当時はGoogleマップもSNSもない時代。『ぴあ』を見た人たちが、地図で住所を調べてたどり着く。
さらにその噂を聞きつけた週刊誌(週刊新潮1983年9月29日号)が、トップグラビアに掲載。そこに添えられていたのは「ラブホテルか芸術か」というインパクトあるコピーだった。朝の情報番組や深夜番組でも取り上げられ、気づけばマンションは完売に。ちなみに分譲価格は「相場よりも結構高かった」とのこと。週刊新潮の記事には「3800万円前後」とあった。「こういった住宅に興味を持って希望する人たちがいるんだって驚いた。それから初めてアートコンプレックス運動が軌道に乗ってきました」と梵さんは振り返る。
気になる部屋の間取り
部屋は分譲のため、賃貸で出ることは滅多にない。中をのぞかせてもらうことはできなかったが、資料から間取りを確認して書き起こした。2LDKのゆったりとした空間のようだ。LDKの壁は曲線で、空間はのびやか。内部には外壁のような装飾はなく、一般的な住居である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら