「聖人・孔子」をプロパガンダに利用する中国の茶番 マルクスと孔子の対談動画が物笑いの種に
そのため、2020年夏ごろからは西側各国で孔子学院への警戒論が強まり、校舎の閉鎖が相次いだほか、日本国内でも厳しい目が向けられるようになった。
対して、中国政府は孔子学院の運営母体を便宜上の民間公益団体に切り替えたり、施設の名前を変えたりして運営を続けようとしているという。
孔子平和賞、失敗する
孔子の名を冠した、政治色のある中国発の国際プロジェクトはほかにもある。たとえば、2010年12月に中国国内で創設された「孔子平和賞」だ(翌年から主催が香港の団体に引き継がれた)。
孔子平和賞が生まれた契機は、中国民主化運動の精神的リーダーだった劉暁波が、その2カ月前にノーベル平和賞を受賞したことである。当時、中国国内では保守派を中心に平和賞の選出基準が恣意的(反中国的)だとして反発が起き、これに対抗する形で「中国とアジアの平和観と人権観を示す」人物を表彰する新たな国際賞が創設された。
歴代の受賞者は、台湾の中国国民党名誉主席の連戦、ロシアのプーチン大統領、キューバのカストロ議長……と、中国の体制と親和的な海外の要人たちが多くを占めていた。しかし、ほとんどの選出者が受賞を固辞したため、中国側が当該国の留学生などを代理に立てて強引に授賞式を開くという不面目な事態も常態化していた(2013年に受賞した中国人僧侶の釈一誠のみ、本人が授賞式に出席)。
ちなみに2015年には、日中友好人士として知られる村山富市元首相が最終選考まで残ったが、村山側が健康状態を理由として辞退したため、賞はジンバブエの独裁者であったムガベ大統領に贈られている。
この孔子平和賞はあまりにも「茶番」感が強いためか、2017年を最後に廃止された。ただ、世界で最も権威があるノーベル平和賞に対抗するために、中国が「孔子」を持ち出したことは興味深い。孔子学院も孔子平和賞も、最終的には成功していないとはいえ、近年の中国はパブリック・ディプロマシーに孔子を盛んに活用しているのである。
孔子は世界史上でもソクラテスと並び称される有名な思想家だ。その言行録である『論語』も、人類全体の古典として各国語に訳され、広く読まれている。
現代の中国が他国からの尊敬を勝ちとりつつ、自国の知的・文化的優位性をアピールするうえで、アイコンとして最も適した人物なのは確かである。
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