【80年ぶり】恒星の爆発で"新生命"は生まれるか 星の世界にある「命のバトンリレー」とは?

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夜空の何もなかったところに突然星が輝き始める現象を「新星」といいます。その中でも、ひときわ明るいものを「超新星」といいます。

名前は似ていますが、起きている出来事は異なります。

星の表面の爆発か、星全体の爆発か

超新星は、「恒星全体が爆発」する現象です。さきほど説明した、太陽よりも重たい恒星が死ぬときに起きる超新星爆発が、その一例です。

新星は、「恒星の表面が爆発」する現象です。爆発を起こすのは、白色矮星です。白色矮星の近くに別の恒星があり、その恒星から白色矮星に向けてガスが降り注いでいる場合、突然、ボカンと爆発を起こすことがあるのです。

爆発を起こした白色矮星は粉々に消えてなくなるわけではないので、降り注いだガスがたまると、また爆発を起こします。「かんむり座T星」はその周期が約80年だと考えられています。

今年5月に発表された論文によると、白色矮星の表面が爆発するときに、「リン」が大量に生み出されるそうです。リンは、生き物を形づくる細胞の1つ1つを包みこむ細胞膜に含まれています。遺伝子や骨、歯にも使われていて、「生命に欠かせない大切な元素」です。

まとめると、地球上にある物質は、「恒星の核融合反応」「超新星爆発」「中性子星の合体」「白色矮星表面での爆発」などでつくられた元素から成り立っている、ということです。

「人は星の子」「人は星のカケラ」という言葉を聞いたことはありますか? 私たちの体を形づくる元素も、元をたどると星とつながっているのです。

さまざまな元素を生み出す現象は、宇宙で普遍的に起きています。つまり、惑星や生命をつくるための材料は、宇宙のあちこちにあるわけです。

とすると、この宇宙のどこかには、地球と似たような惑星や生命、あるいは、人類の常識を超えた、新しいタイプの惑星や生命が存在しているかもしれません。

星の営みを理解する研究は、地球の生命や宇宙の生命を理解することともつながっているのです。

宇宙で起きる圧倒的で非日常的な出来事が、地上で暮らす私たちと無縁ではないとは、じつにおもしろいですよね。

ぜひ日常の風景を見ながら、夜空の星とのつながりを感じてみてください。

井筒 智彦 宇宙博士、東京大学 博士号(理学)

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いづつ・ともひこ / Tomohiko Izutsu

1985年生まれ。東京大学理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士課程修了。NASA(アメリカ航空宇宙局)人工衛星のデータ解析により、宇宙プラズマの乱流輸送現象を世界で初めて実証し、2010年地球電磁気・地球惑星圏学会にてオーロラメダルを受賞。東京大学での研究を終え、コロラド大学のNASA人工衛星解析チームに入る話が進むも辞退し、2013年少子高齢過疎化が進む広島県北広島町芸北地域に移住。宇宙飛行士のコスプレをして、テレビ、ラジオ、新聞、YouTubeなどのメディアで宇宙の魅力を楽しく伝えながら、「宇宙町おこし」に取り組んでいる。その活動が評価され、2015年公益社団法人日本青年会議所の人間力大賞・総務大臣奨励賞を受賞。●井筒智彦YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCL7OvecPUxQ413cFJ0CIosw

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