三菱商事、サケ赤字で資源安とダブルパンチ 養殖サケの相場が低迷、回復の展望は?
それでも、「今が底値で年度後半には回復する」と、三菱商事の鮭鱒養殖事業室長でセルマック会長の佐藤裕氏は強気の姿勢を崩さない。
根拠とするのが、養殖サケ独特の市況サイクルだ。成体に育つまでの期間と同じ、約3年周期で乱高下を繰り返す。特殊事情が重なったとはいえ、足元の相場は下落サイクルの最終段階にあるという見方だ。
コストコなど米国の大手スーパーの店頭では、2014年末に1ポンド=7.99ドルで販売されていたサケが、6月後半には5.99ドルへ下落。価格安により需要が喚起され、チリ産養殖サケ相場は7月から、じりじりと上値を探りだした。
一方で相場変動リスクを抑える努力は不可欠だ。「コスト削減が一丁目一番地」(佐藤氏)。フンボルトの疫病を抑える養殖技術を、セルマックにも導入、歩留まりを高める。
川下の販路拡大も急務。セルマックの事業は川上の養殖に偏重しており、生産地域ごとにスポットで卸売りするなど販売効率が悪かった。
そこで欧州三菱商事の販売ネットワークを活用し、英国の流通大手と固定価格での長期販売契約を締結。価格変動リスクをヘッジする。国内でも、ローソンで販売している「焼さけハラミ」おにぎりの一部を、セルマックのサケに切り替えている。
カーギルも参入を狙う
とはいえ、環境変化は相場安だけにとどまらない。2014年12月、サケ養殖で世界1位のマリンハーベスト(ノルウェー)が、同5位のアクアチリ(チリ)の買収を発表。2014年の生産量は56万トンと圧倒的首位に立った。また米穀物メジャーのカーギルも、年内に1870億円で、サケ用飼料大手のEWOS社を買収見込み。養殖事業への参入をうかがう動きも見せている。
三菱商事は生産量21万トンと世界2位(2014年ベース)。1位のマリンハーベストとの差は大きく、3~4位は15万~18万トンと横並びの構図だ。
TOB(株式公開買い付け)によって取得したセルマックは、決して安い買い物ではない。買収総額1459億円のうち、のれんおよび耐用年数を確定できない無形固定資産は、2015年3月期末で942億円に及ぶ。多額のプレミアムを支払ったことから、早期にコスト削減や販路拡大を実現できなければ、将来的な減損の芽になりかねない。
三菱商事は今年9月末までに約1300億円を投じ、シンガポールの農業商社のオラムへ2割出資を行う計画だ。大型投資へ厳しい視線が注がれる中、総合商社の雄として実力が試される。
(「週刊東洋経済」2015年9月12日号<7日発売>「核心リポート02」を転載)
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