三菱商事、サケ赤字で資源安とダブルパンチ 養殖サケの相場が低迷、回復の展望は?

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サケの養殖事業で赤字を計上、今年度業績の出足を引っ張った(写真:karoline O.A Pettersen)

総合商社最大手の三菱商事に異変が生じている。2015年度第1四半期(4~6月)の純利益は749億円と、前年同期比32%もの減益だ。5大商社の中でも4位発進と出遅れた。

各商社ともエネルギーや金属の権益を多く抱えている。三菱商事は原油や一般炭などの価格下落が響き、資源分野は前年同期比306億円のマイナスとなった。

しかし、ライバル勢も状況は同じ。想定外だったのは、これまで同社の安定収益の柱であった、生活産業事業の収益も同112億円減少し、3分の1になったこと。特に足を引っ張ったのは、前期に大型買収を行ったばかりのサケ・マス養殖事業だ。

三菱商事は2014年11月に1459億円を投じて、サケ養殖大手のセルマック(ノルウェー)を完全子会社化している。2011年に買収したチリの同業、サルモネス・フンボルトと合わせ、生産量は約20万トンに拡大して、世界第2位に躍り出た。

養殖サケは安価なタンパク資源として今後アジアなどでの拡大が有望視されている。三菱商事は、ノルウェー、チリ、カナダに生産地を分散できるメリットもあり、生活産業では異例の1000億円級の大型投資に踏み切った。

ロシアの輸入が急減

だが、エネルギー・金属資源に続き、養殖サケ市場も相場安に襲われる。2014年8月、サケ消費で世界の1割を占めるロシアは、ウクライナ問題に対するEU(欧州連合)の対ロ経済制裁への報復として、一部EU産食品の輸入を禁止。ノルウェー産サケも禁輸の対象となった。

追い打ちをかけたのが、昨秋からの原油価格の急落である。資源輸出に依存するロシアから資金が逃避して、ルーブル安が急激に進行し、同国の購買力そのものが冷え込んだ。その結果、今年1~2月、ノルウェー産の代替となるチリ産などの輸入量も、対前年比で約7割減少した。

行き場を失ったサケは、北米市場に流入。チリ産養殖サケの今年5月以降のマイアミ受渡価格は1キログラム=8ドル前後と、2014年5月の直近ピークから3割以上下落。三菱商事の今第1四半期決算では、フンボルトとセルマックの2社合計で、68億円の赤字(純利益ベース)を計上した。

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