川崎重工、「相次ぐ不正」で業界3位に凋落の危機 防衛の裏金問題と舶用エンジン不正に社長陳謝

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川崎重工の足元の業績は好調だ。

重工大手は円安や防衛予算増などの追い風を受けている。2025年3月期の業績予想は、各社が重視する事業利益ベース(IHIは営業利益)で見ると、三菱重工業が3500億円、川崎重工が1300億円、IHIが1100億円といずれも過去最高益を見込む。

今年5月9日の2024年3月期決算の説明会では、橋本社長は「まだまだ成長がスタートした段階。決して浮かれずに成長につなげていく」と意気揚々と語っていた。決算発表を挟んで川崎重工の株価は14%も上昇した。

しかし、防衛事業の裏金問題発覚後は株価が下落。8月に発表した第1四半期(2024年4~6月期)の事業利益が169億円と、通期の1300億円計画の進捗率が低かったことを契機に、時価総額でIHIに逆転された。

業界では三菱重工、川崎重工、IHIという序列だったが、時価総額では川崎重工が3位に転落してしまった。株価の割高・割安感を示すPBR(株価純資産倍率)は1.58倍。1倍達成に苦戦する企業が多いことを考えれば高い評価を得られているが、三菱重工の3.2倍、IHIの2.89倍と比べると大きく見劣りする。

信頼低下やさらなる不正発覚が懸念

2つの不祥事が業績に与える直接的な影響は大きくない。防衛事業の裏金問題では税務調査で指摘された税金費用はわずか6億円で、2024年3月期決算に計上済み。現時点で「受注が止まったという報告は受けていない」(橋本社長)。舶用エンジン事業は証書の交付が停止され出荷が止まったものの、事業規模が小さいため全体業績への影響は軽微とみられる。

それでも株価が振るわないのは、度重なる不正により市場からの信頼低下があるのだろう。川崎重工は、「全事業を対象に社内調査をする」と表明しており、さらなる不正事案が出てくるリスクが意識されているのかもしれない。

川崎重工はコンプライアンス特別推進委員会を設置し、2つの不祥事に関する原因究明と再発防止策の策定を進める。11月1日付で、防衛事業管理本部を社長直轄組織として新設し、防衛事業全体の情報の一元管理やガバナンス体制構築を進める。

川崎重工が信頼を回復するためには、今度こそ早期にすべての膿を出し切り、出直しを図る必要がある。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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