まるでホラー「教育虐待」描いたマンガの深い意図 第三者が認識しにくい「密室での暴力」の深刻
実際、児童相談所や学校が教育虐待を認識しているかというと、そうでもないわけです。「教育熱心な家庭」の子ども部屋という「密室」で起こるので可視化されにくいし、どこからどこまでが虐待かという線引きが難しい。子どもへの影響が大きいにもかかわらず、概念が広まらない。そんな教育虐待というものを社会に知ってもらう必要があると思ってテーマにしました。
それから、特に近年は首都圏を中心に中学受験ブームが起きていますが、ここにはたぶん、格差の問題も絡まってくると思うんです。受験するのが当たり前という環境となっている地域も多数あります。そんな中では、経済的にちょっと苦しいという家庭でも、中学受験の世界にのみ込まれる可能性が出てくる。家庭学習での自力受験は難しく、親は塾にお金を払わなきゃいけない。そうすると、親は支払っただけの見返りを求めてしまいがちになります。
社会において学歴というものが必ずしも必要のない時代になったにもかかわらず、受験ブームの中で学歴に対する思いがエスカレートしやすい状況が生まれてしまっています。僕はここにも問題を感じています。
若い世代にも情報を届けたい
――今回、書籍とは別にマンガという方法でも世に出されました。なぜマンガにしたのですか?
『教育虐待』として最初に出したのは新書版の本ですが、新書はどちらかというと大人が読むものです。教養を身につけたいとか、昔被害に遭った記憶がうっすらとある大人が、あれは虐待だったんだと再確認するために読むような人が読者層としては多い。
ただ僕自身としては、今まさに教育虐待を受けている子など、もう少し若い世代にも情報を届けたいという気持ちがありました。読者層をもっと下の世代に下ろしたかった。
先ほども言いましたが、教育虐待というのは家庭という密室の中で行われます。しかし密室で何が行なわれていたかは、ノンフィクションではなかなか書けない。殺人事件は公判で何が行われたかが立証されますが、教育虐待は殺人でもない限り、表に出てこないんです。
しかも教育虐待について子どもに聞いたところで、本人がまだ幼く、それをきちんと説明できないこともある。そう考えたときにマンガという形であれば、物語という形で逆に現実を見せることができる。マンガという媒体、メディアが非常に合っていると思いました。
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