「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由

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これまでの日本の農業行政は、コメを除く穀物や肥料など、その大半を輸入に頼ってきた。今回の基本法改正では、90~100%を輸入に頼ってきた化学肥料なども、国内での生産基盤を整備する方向に転換しており、ここにきてやっと輸入だけに頼った農業政策だけではダメであることを政府が認めたといっても過言ではないだろう。食料自給率を何とか高めるための方向に舵を切り始めたと言っていい。

その背景には、従来は高い円に依存して食料は輸入さえすれば何とかなる、と考えていた政府が、1ドル=160円台にまで進んだ円安を見て、食料を輸入できなくなる時代がやってくるかもしれない……、という現実に気付いたと言っていいのかもしれない。

農業生産の効率向上を阻害する「農地法」の改正は?

もっとも、食料の安全保障は、農業政策だけで解決できるような問題ではない。農地の効率的利用を現在よりも大幅に引き上げていく方法を考えなければならない。そのためには、現在の農業生産の向上を阻害している農地法の大幅な改正が必要だと指摘されている。

例えば、現在でも農地を取得するには、年間150日以上農作業を行う農業従事者でなければならないといった厳しい規制が存在する。市町村などが農業委員会などと共同で実施する「農用地利用集積計画」などを使えば、農業従事者以外でも農地を購入することが可能になったものの、地域の農業委員会の許可が必要になるなど、まだまだ数多くの規制が残っている。農地の流動性はまったく進んでいない。

一方、法人の農地取得も同じような状況だ。一定の要件を満たした法人である「農地所有適格法人」にならなければ、農地を取得できないことになっている。一般の株式会社は農地が取得できずに、現在のところ賃貸しか認められていない。法人が農業を始めるにあたっては基盤整備などの長期投資が不可欠だが、賃貸では限界がある。

要するに、現在の農地法では、原則として耕作する人しか農地を所有できないと言うことになっており、幅広い事業を展開する商社などが、農業生産事業に進出しようとしても、農地の確保が日本ではいまだにできないことになる。これでは日本の食料安保を守ることができない。

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