「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由

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耕地面積の利用率という面でも、430万ヘクタールのうち91%しか利用されていない。1割は放置されているのが現状だ。そんな状況の中で、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、日本の農業政策は大きな転換点を迎えている。食料自給率の低下を放置して、アメリカなどの食料輸出国から輸入すれば賄えるという基本方針が、ここにきて輸入だけでは賄い切れない現実が見えてきたからだ。

そんな状況の中で、今年5月に成立したのが日本の農業行政の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」の改正だ。現代の時代に即したものにしようと、政府が戦後続けてきた政策を大きく転換させるものになろうとしている。ちなみに、今回の基本法改正に基づいた農業政策の指針となる基本計画作りを、2025年3月をめどに作成し閣議決定する予定になっている。

食料安保の強化目指した基本法改正?

今回の基本法改正では、多岐にわたって修正や新設を行っているのだが、その最大のポイントは「食料安保の強化」に取り組んでいることだ。農林水産省がまとめている「食料・農業・農村基本法 改正のポイント 令和6年8月」を見ると、次のような4つの点に集約される。

①食料安全保障を基本理念に
食料輸送手段の確保、食料の寄附促進の環境整備、持続可能な食料供給の促進を図ると同時に、海外における事業展開の促進、農産物の輸入に関する措置の拡大、農産物の輸出の促進など、海外からの食料輸入基盤を強固なものにする。

②環境と調和の取れた食料システム
食品産業の健全な発展、農業における環境への影響を低減することを促進する。異常気象などに対するための食料確保をシステム化する。

③人口減少下での農業生産性向上
農業の担い手の育成と確保を図り、農地の確保に受けて農業経営の基盤強化を図ることで、農地の確保および有効利用を推進する。さらに、先端技術(スマート農法)を活用した生産・加工・流通方式の導入、農産物の付加価値の向上などを図り、生産性向上を目指す。

④農村や農業のインフラの整備
農地の保全を目的とした共同活動の促進、地域の資源を活用した事業活動の促進、鳥獣対策など。

単に、農業生産に関する法改正ではなく、包括的に食料を国民の手に届けるためのシステム作りを図ることで、食料安保の強化を整備しようという考えのようだ。実際に、基本法の改正とともに「食料供給困難事態対策法」を2024年6月に成立させている。戦争や大災害など有事の際の食料供給体制を整えるための法律だ。

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