時給900円の求人に、なぜママが殺到したのか 子ども同伴で通勤できて勤務時間が柔軟

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子持ち主婦にやさしい点は、託児機能の併設だけではない。スタッフの多くが就学前の子どもを持つママで、「週3日くらい働きたい」「3~4時間働きたい」「15時には帰りたい」といったニーズが高いそうだが、こうした個々の希望に合わせて勤務時間を柔軟に組むようにしているのだ。

「午前中から2時間働き、お昼休憩をはさんで午後にまた2時間働いています」と話すのは、2歳の男の子を育てる平尾裕子さん(33)。決まった時間でないとお昼ご飯を食べない子どもの生活リズムに合わせ、このスタイルに落ち着いたという。

現在、バス通勤で週3日~4日出勤している。当初は大泣きしていた子どもも、最近ではここに来るのが楽しみになったようで、「ママ、お仕事行こう!」と言うようになった。 

平尾さんは出産を機に仕事を辞めたが、ずっと仕事を探していたという。しかし、認可保育園には入れないし、無認可保育園の保育料は高額だ。子どもが小さいうちはできるだけそばにいてあげたいという思いもあり、無理をしてまで無認可保育園に預ける気にはなれなかった。

こうした中、「ママスクエア」はやっと手にした働き口だ。平尾さんはコールセンター経験者ということもあるだろうが、久しぶりの仕事には「まったく不安がなかった」と笑う。なぜなら、社会復帰があまりにもうれしかったからだ。以前は子どもとずっと一緒にいるとイライラしてしまうこともあったが、今は専業主婦だった時よりも子どもにやさしく接することができているという。

スタッフの多くが、市内在住で主に自転車通勤をしており、まさに「職住近接」の効率的な働き方が成立しているのも特徴だ。たとえば、朝は幼稚園に子どもを送ってから出勤し、途中でお迎えに行って子どもを連れて戻り、夕方まで働く女性がいる。小学生の子どもがいる女性では、勤務中に託児スペースで宿題をやらせ、勤務後にそのまま一緒に塾へ付き添うといったケースも。

預けられる保育園がないために働くことをあきらめている女性は多いだけに、託児機能併設はママにとってありがたい環境だ

子どもが熱を出すなど、ママならではの突発的な欠勤にも対応できる業務体制となっている。

業務内容の都合上、稼働時間は平日の10時から18時くらいまでと限られているが、月単位で仕事を請け負っているので、ある週に欠勤者が集中したとしても、翌週以降に一丸となって頑張るなどしてカバーできているそうだ。

2015年度内に、新店舗が続々とオープン

約40平方メートルの託児スペースには、無認可保育園に準ずる形で保育士を配置。登園基準は認可保育園に準ずる形で運営している。安全を考慮し、「1歳以上で歩ける子」を託児利用の条件としているが、授乳中の場合は、休憩扱いにすれば授乳のため退席してもよいことになっている。仕事復帰を理由に断乳する必要がない点も、育児中の身にはありがたい配慮だ。今後は、小学生が集中して宿題ができるよう、15時以降はボールプールを撤去し、机といすを並べることも検討しているという。

「皆で子どもを見よう」というのが「ママスクエア」の方針の一つだというが、実際、現場はアットホームな雰囲気だ。子どもたちは楽しそうに遊んでおり、非常ににぎやか。親であるスタッフ同士が、一緒にガラス越しに子どもの様子をのぞいている姿も微笑ましい。保育士も生き生きとしているのが印象的で、宮本弥生さん(29)は、1歳8カ月のわが子をおんぶしながら子どもたちを見ていた。宮本さんは週4日保育士として勤務しているが、都内在住なので1時間半かけて子連れ出勤しているそうだ。それでも、「わが子と一緒に働ける保育現場はほかにないですから!」と、ママスクエアの存在に感謝しているという。

9月からは仕事が倍になるので、スタッフを増やす予定だ。藤代代表は今後について「全国展開したい。100カ所くらいは作りたい」と話す。周辺業務を外部に委託したい会社は増えており、個人情報漏えいの問題などにより在宅業務がスムーズに浸透していない状況もあるので、ママスクエアに対する社会的ニーズは高いとみている。

実際、さまざまな企業から引き合いがある。年度内には、京王電鉄と協業し新たにママスクエアを5店舗オープンする予定だ。教育関連企業とは子ども向けの教育プログラムを企画中。他の電鉄系企業やマンション事業者からも施設オープンの打診があり、食品メーカーやほか教育関連企業との協業についても準備が進んでいるという。同社の取り組みは、多方面から注目を集めそうだ。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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