紫式部が目撃「宮中で女性の悲鳴」とまさかの光景 式部たちが恐る恐る様子を見に行ったところ…

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そうこうするうちに、やっと、式部の丞の藤原資業が駆けつけてきます。そして、あちこちの灯火をたった1人で点けて回りました。

明かりがつくと、女房たちのなかには、呆然として、ただただ、顔を見合わせている者もいます。

そこに、天皇から中宮へのお見舞いの使者がやってきました。死人は出ていませんが、紫式部たちにとっては、本当に恐ろしい大晦日の夜だったことでしょう。

中宮は、衣服を剥ぎ取られた2人の女性のために、蔵の中から装束を取り寄せてくださいました。正月用の装束は盗難被害に遭わなかったため、被害に遭った2人は翌日、何もなかったような顔で装束を身にまとい出仕しました。

平安時代には他にも盗賊の話がある

さて『宇治拾遺物語』の中にも、平安時代の盗賊に関する話が収録されているので、ご紹介したいと思います。

昔、袴垂という盗賊の首領がいました。ある年の10月、袴垂は衣服が入用になり、人から衣服を盗もうと、あちらこちらを物色していました。それは夜中になってからも続きます。

もう人が寝静まったとき、着物を着た人が、笛を吹きながら1人、袴垂のほうにやってきました。

(この人こそ、わしに着物をくれようとして、現れた人だ)。袴垂は勝手な解釈をして、その男に近づき、衣服を剥ぎ取ろうとしますが、何となくその男に恐怖を感じて、まずは後ろからついて歩くだけにとどめました。

しかし、その男はそのようなことは露知らずといった様子で、ひたすら、堂々と歩きます。

笛を吹きながら悠然と歩くその男の迫力に押される袴垂。しかし、(このままではいられようか)と意を決して、袴垂は刀を抜いて、男に襲いかかろうとしました。

すると男は笛を吹くのをやめて「何者か」とついに口を開きます。袴垂はなぜかそれだけで、呆然となってしまい、何もできません。

「いかなる者ぞ」と男はまた質問します。「追い剥ぎです」。そう袴垂は答えますが、男はさらに「何者か」と問い続けます。

「袴垂」と言うと、男は「そういう者がいると聞いたことはある。物騒な奴だ。ついて参れ」と声をかけました。そうしてまた、先ほどのように笛を吹き始めます。

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