経営者SNS「セクハラ軽視発言」の本当の被害者 「セクハラなんて可愛く思える…」と発し、炎上

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しかし、その個性をどこで発露するかは、慎重に考える必要がある。起業家や、その社内では「一般論」とされていることでも、誰しもに当てはまる共通見解とは限らない。今回のような性別もそうだが、地域や言語、宗教など、あらゆる立場の人間がいる空間で「主語を大きくする」ことは、メリットよりも、むしろデメリットのほうが大きい。

経営者は「企業の顔」であり、個人のSNS投稿であっても、「法人としての意思表明」と認識されてしまう。好印象を与えて、ブランドイメージを高める可能性もあるが、逆もまたしかりなのだ。

積み上げてきたブランドイメージを崩される悲しみ

経営層と言っていい立場にある人物の発言で、企業イメージそのものが悪化したケースで、記憶に新しいのが牛丼チェーン「吉野家」常務取締役企画本部長(以下、肩書は当時)の事例だ。

2022年4月、早稲田大学での社会人向け講座で、講師に招かれた常務が、自社のマーケティング手法を「生娘をシャブ漬け戦略」と紹介。「生娘のうちに牛丼中毒にする」などと説明した。

会社上層部を担う人物の耳を疑うような発言に強烈な批判が浴びせられている(編集部撮影)

当然ながら、この発言は受講生によって、すぐさまSNSにて拡散され、炎上を呼んだ。吉野家は講座の2日後に「極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」と謝罪し、同日付で常務を解任した。

吉野家は当時、「10年かけて開発した親子丼」の販売直前だった。しかし常務発言の余波で、発表イベントをはじめとするPR活動の自粛を余儀なくされる。結果的に「親子丼」は2カ月半で終売となったが、翌年からは期間限定商品として販売されている。

吉野家の従業員たちからしてみれば、とばっちりにも程がある。「身から出たサビ」なら自業自得と言えるが、当然ながら「シャブ漬け戦略」が社是だったとは到底思えない。また元常務は、吉野家の生え抜きではなく、外資トイレタリーメーカーからの転職組だった。プロパーで頑張っている人々からすれば、ぽっと出の人間に、積み上げてきたブランドイメージを崩されてしまった悲しみは、どれほどだったのだろうか。

SNSに目を向けると、同じく外食チェーンの「焼肉ライク」の社長(当時)による投稿も、ちょっとした炎上状態となった。

焼肉ライク
おひとりさま需要を開拓し急成長を続けていたが、社長のツイートがプチ炎上。ツイッターをやめると表明し、逆に注目を集めることになった(撮影:梅谷秀司)
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