(第26回)発展可能性を持つ独立した零細企業

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経済危機によって日本の製造業は大きな打撃を受けたが、町工場への影響も大きかった。経済危機によって受注が一時7~8割減少した企業も多い。そのため廃業した例もある。大田区の工場数は、08年からの2年間で、8%程度減少した。東大阪市でも5~7%減った。全国で見れば、08年から09年にかけて、3万社近くの中小製造業の事業所(4人以上)がなくなり、約70万人もの雇用が失われた。

最近では、最大の顧客であった中堅・大手企業が製造拠点を海外にシフトしたり、海外に発注するようになったため、受注がさらに減っている。このため、今後も工場数が減少するのは、避けられないと見られる。日本の町工場は大淘汰時代に直面する可能性がある。

技術があれば水平分業で発展できる

レベル4までの企業は、海外移転によって円高や新興国の攻勢に対応できる。実際、前回述べたように、海外移転はすでにかなり進展している。だが、レベル5の企業が海外移転するのは難しいだろう。

しかし、技術力があれば海外に拠点を移すことは必ずしも必要でない。国内に拠点をおいたままで、水平分業のネットワークの中に入り、生き残ることは十分可能だ。

ただし、水平分業はグローバルなものであることが望ましい。そのためには、海外市場・顧客を積極的に開拓することが必要だ。総じて、従来のビジネスモデルからは脱皮する必要がある。そうした発展は、決して夢ではない。実際に、さまざまの実例がある。

09年1月23日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のH−�Aロケットに相乗りして人工衛星「まいど1号」が打ち上げられ、すべてのミッションが成功裡に終了した。この衛星を製作したのは、東大阪市の町工場が組織するSOHLA(東大阪宇宙開発協同組合)である。

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