前回述べた「レベル4」は、従業員数20~300人程度の中小企業だ(製造業の場合)。これより小規模の企業を「レベル5」と呼ぶことにしよう。
中小企業基本法の呼び方では「小規模企業者」である。一般には、零細企業、町工場などと呼ばれる。実態は個人事業である。具体的なイメージとしては、映画『男はつらいよ』に出てくる「朝日印刷」を想像したらよいかもしれない。寅さんは、「やあ労働者諸君、今日も貧乏たらしく働いているか」と言うのだが、後で述べるように、レベル4や5の企業の中には、人工衛星の打ち上げに成功したところもある。
したがって、統計データの平均値では実態を捉えにくいところもあるが、まずは統計を見よう。経済産業省の「工業統計表」によれば、製造業で従業員数4~19名の事業所は全国で16・5万あり、従業員数は141万人だ。製造業全体に対する比率は、事業所数で70%、従業員数で18・3%、出荷額で7・1%である。
表の左3欄には、従業員1人当たりの数値を示す。まず注目されるのは、1人当たりの現金給与が小規模になるほど顕著に低下することだ。4~9人では281万円で、1000人以上の636万円に比べると44%でしかない。10~19人の326万円になって、やっと50%を超える。寅さんの言葉は、いまでも平均値としては正しいわけだ。
賃金が低いのは、生産性が低いからである。4~9人事業所の1人当たり出荷額は、1000人以上の17・2%でしかなく、1人当たり付加価値は35・4%でしかない。こうした生産性格差は、零細企業の資本装備率が低いためか、あるいは大企業が零細企業から搾取しているためか、このデータだけからは分からない。