(第26回)発展可能性を持つ独立した零細企業

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 なお、賃金格差が付加価値格差より小さいことに注意が必要だ。これから推察されるのは、零細企業の資本装備率が低く、労働集約的生産が行われていることだ。これは個別企業の実例からも推察される(加工を手作業で行っている場合が多い)。

東京都大田区や墨田区、大阪府東大阪市にこうした工場が集積していることが、よく知られている。大田区のホームページの「輝け!大田のまち工場」によると、2008年における工場数は4362カ所であり、従業員数は3万5741人、製造品出荷額は7796億円であった。1工場当たりの平均では、従業員が8・2名、出荷額が1・8億円になる。大田区の場合、最終製品の製造より、金属を素材として「削る」「磨く」「メッキする」などの加工を専門に請け負っている工場が多い。

町工場はピークから半分以下に減少した

1990年代以降、町工場は減少している。10年末の工場数は大田区が4000カ所前後、東大阪市が5600~5700カ所といわれる。大田区の工場数は、ピークの83年には9190カ所だったので、半分以下に減少したことになる。東大阪市の町工場は、83年の約1万カ所のピークから4割程度減少した。

町工場減少の原因としてこれまで言われてきたのは、事業主の高齢化と後継者不足、それに宅地化の影響である。工場が移転した跡地にマンションなどの住宅が建つと、音や振動に対する苦情が増える。それがさらに減少を加速する。新興国工業の成長によって低価格製品の輸入が増えたこと、製造業の国内市場が縮小したことの影響も大きい。

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