60歳を過ぎたら「たかが便秘」では済まされない 「大きなウンチ」を「しっかり出す」が腸活の基本

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また、同じように腸に炎症が起こり、腹痛や下痢をもたらすクローン病も増加傾向にあります。こちらも難病に指定されている病気で、小腸や大腸での発症頻度が高く、日本には約4万人の患者がいるとされています。

潰瘍性大腸炎もクローン病も、腸管での免疫機能が暴走することで、腸管に炎症が起きると考えられ、炎症性腸疾患(IBD)と総称されています。

動物実験で実証された「食物繊維」の効果

これらの病気も、レジスタントスターチ(食物繊維)を摂取することで症状が緩和する可能性のあることが、ブタを使った実験で示されています。ブタは人間と腸の長さがほぼ同じため、研究に使われることが多い動物です。

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その実験では、ブタにレジスタントスターチの少ないコーンスターチ(トウモロコシのでんぷん)と、レジスタントスターチが多い非加熱のジャガイモをそれぞれ14週間食べさせたところ、非加熱のジャガイモを与えたブタのほうが、明らかに炎症性腸疾患の症状が緩和したのです。

また、炎症性腸疾患には、短鎖脂肪酸の1つである「酪酸」が治療に有効だと示唆する実験もあります。

慶応義塾大学の長谷耕二教授らの実験では、酪酸を結合させたでんぷんを、大腸炎を起こしているマウスに与えたところ、与えていないマウスに比べて免疫の暴走を抑える細胞(制御性T細胞)が2倍ほどに増え、その結果、大腸炎の症状が緩和したといいます。

このことから、腸内に酪酸を増やしていけば、炎症性腸疾患(IBD)の改善効果が期待できるといえます。

特に潰瘍性大腸炎は、直腸部分から炎症が起こることが研究で明らかにされています。したがって炭水化物を冷やすことで増えるレジスタントスターチならば、直腸まで善玉菌を届けることができるため、改善効果が期待できるというわけです。

食物繊維についていろいろ述べましたが、腸を元気にする食物繊維をしっかり摂ることは、命に関わるような重大な病気を予防することにもつながるということがわかっていただけたのではないでしょうか。

笠岡 誠一 文教大学健康栄養学部教授

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かさおか せいいち / Seiichi Kasaoka

1967年、広島県生まれ。山之内製薬(現・アステラス製薬)健康科学研究所研究員、文教大学専任講師、アメリカ国立衛生研究所客員研究員を経て現職。専門分野は栄養生理学、食品化学。レジスタントスターチに早くから注目し、レジスタントスターチを増やした「ハイレジ食」の開発なども行う。テレビや雑誌などメディアでの解説も多い。管理栄養士。食品栄養学修士(東京農業大学)。博士(農学)(愛媛大学)。

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