ヨーカドーが「第2のライフ」には多分なれない訳 「消費者を見ない姿勢」は変化の妨げになる
迫は「現場は、経営の最高の師匠」と書き、常に現場を見て回り、そこで起こっていることや、行われている工夫を経営にフィードバックさせてきた。それが現場と本部の一体感を生み出し、ミスターミニットの業績回復を支えた。
このように、本部が変わろうとしていても、現場がそれと連動していなければ、全社的な業務改善はありえない。
ヨーカドーも、これまで本部主導でさまざまな改革を行おうとしてきた。2000年代後半には、ディスカウント業態やホームセンター業態など、新しい業態の模索も続けた。また、2011年にはオリジナルの衣服ブランドを立ち上げ、衣料品改革を行おうとした。しかし、どれもパッとしなかった。こうした度重なる改革のどれもがうまくいかないなか、現場の中で、「結局本部の指示なんて……」と思う人がいてもおかしくない。心の底からの連携が難しいのである。
もし、本部と現場がしっかり連携できていれば、レジ列が長くなるだけのDX化に、現場が納得しただろうか……? イトーヨーカドーからは、さまざまなポイントから「消費者不在」「現場不在」が透けて見える。
消費者はいるのに、見えていない
以上のような理由から、ヨーカドーの「ライフ化」はなかなかに難しい道だと思える。つまり、①本部による「消費者理解が欠如した、『内側の論理』による政策」、そして、②それによる現場の本部への不信感、だ。
こういう話をしていると、私の担当編集が次のような話をしてくれた。
「最近、渋谷の某百貨店に抱っこ紐を見に行ったんです。いろいろ見てたんですが、店員さんが一切話しかけてこなくて……。
かと言って、忙しそうでもない。さらには、試してみようと思っても商品が固定されて外せないんです。
もちろん、この体験だけですべてを語ることはできないけど、『ああ、百貨店って最近こういう場所だよな……』と感じてしまって」
消費者は、すぐそこにいる。しかし、見えていない。担当編集が語るのはこのような体験だが、どこか、イトーヨーカドーのことを思い出さずにはいられないエピソードでもある。
【2024年9月5日10時35分追記】初出時、33店舗の閉店に関する記載に一部誤りがありましたので、修正致しました。
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