ヨーカドーが「第2のライフ」には多分なれない訳 「消費者を見ない姿勢」は変化の妨げになる
では、ヨーカドーの「ライフ化」は成功するだろうか。端的に言って、とても厳しいのではないかと筆者は考える。
ライフが優れているのは、単に「都心と食に特化」しているからではない。その底流には、「消費者のほうを向く」姿勢がある。ライフがこのように食に特化するようになったのは、あくまで「結果論」だからだ。
ライフでは店舗ごとにターゲット層を定め、それに合うような店舗レイアウトや戦略を立てている。
例えば、池袋三丁目店では、近辺に単身者が多いことから、入り口近くに惣菜コーナーを設置し、野菜も小分けにしたものを多く置いている。そこにいる「消費者」ありきで品揃えなり、売り方を決めているのだ。だからこそ、郊外のショッピングモールでさまざまなものが手に入る時代において、あくまでも日常的な購入頻度の高い「食」を追求する戦略になったのだろう。
では、ヨーカドーにこうした「消費者ありき」の発想があるかというと、疑問符が浮かぶ。
以前私は、東京23区にあるヨーカドー全店をめぐり、実際の店舗の様子をレポートしたことがある。そこで目にした光景は、ヨーカドーの「消費者不在」あるいは「現場不在」とも見える店舗づくりだった。
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例えば、現在ヨーカドーではDX化の名の下に、セルフレジの導入を進めているが、その顧客層の多くはシニア層。セルフレジへの忌避感があるのか、少ない有人レジに並び、大行列ができているさまが見られた。
また、一部店舗では、店内レイアウトの改革が進められており、ジャンルごとに商品を分類する棚から「家事をする」「毎日をサポートする」「身なりを整える」というように、機能で商品が分類されている。
しかし、「家事をする」の棚を見ると、時計やライト、マウスなどがあり、正直「家事をする」という棚から、こうした商品を見つけるのは難しい。生活の場面ごとに商品を提案する売り方は、近年の小売りでは主流の一つだろうが、結果的にそれが消費者のメリットにつながっていないことが見受けられたのだ。
陥りがちな「内側の論理」のワナ
ライフがするりとやっている「消費者を見る」ことは、ヨーカドーの例を踏まえても、意外と難しいのかもしれない。
実はこうした点は、決してヨーカドーだけの問題ではない。小売業全体の問題でもある。『誰がアパレルを殺すのか』(杉原淳一・染原睦美、日経BP)では、かつて「作れば売れる」ものだったアパレル業界において、その成功体験から抜け出すことができず、消費者のニーズを見ることなく目先の利益に縛られて自滅していくアパレル業界のありさまがリアルに描かれている。業界内部の「内側の論理」だけで動いているのが、アパレル業界だというわけだ。
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