転職より有望?「顧問」という新しいキャリア 転職の年齢制限に引っかかる人への処方箋

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「大手企業の部長クラス、役員クラスに対して、会いたくても会えないと諦めていたベンチャー企業としてはありがたい存在です」

と語ってくれたのは顧問先のひとつのS社長(28歳)。学生時代に会社を立ち上げて年商20億円まで成長させましたが、取引先の大半はベンチャー企業。大企業の決済者へのルートなどがないうえに、

《大企業独特の決済ルールや、仕事をするためのビジネス的なマナーなどを教えてもらえる》

ことが大きな価値になっているとのこと。たとえば、大企業は取引が始まるまで社内の関係部署と関係を構築する必要があります。そのためにあいさつに伺い、信頼を得るために何回も会社紹介をしたり取引業者としての登録手続きをするなど、面倒なプロセスがあります。思わず「面倒くさいからやめようか」と叫びそうな若い社長に、

「初めは手間がかかるけど、取引が始まれば長く、大きな仕事になる可能性があるから我慢してがんばりなさい」

と親身な指導ができる存在は、ベンチャー企業の社内にはまずいません。ちなみにS社長の会社には紹介活動を依頼している顧問が、5名は常時存在しています。

顧問の人材紹介会社も多く登場

こうした人材の紹介に関して、最近はリクルートやインテリジェンスのような人材紹介系の大手企業だけでなく、サーキュレーション社といった独立系の会社も数多く登場。サーキュレーション社では3000人以上の顧問候補が登録されて100社以上の会社と顧問として契約がされているとのこと。顧問紹介が増えて、ビジネスとしても成長が著しいようです。

ちなみに、S社ではDさんの人脈を活かして新たな取引を大企業と開始することができましたが、顧問としての契約はどうなっているのでしょうか?

平均すると契約期間は1社あたり半年から1年、顧問料は月額固定で月に10~20万。短くも思えますが、終了するのはお互いの満足度が低かったせいとは限らないようです。会社が顧問に求めることがスポット的な場合があるからです。

たとえば特定の会社に対する取引の新規開拓のために数カ月の顧問契約をお願いしたい……という要望。まさにプロジェクト的な業務に対する顧問の活用です。いずれにしても、昔からある大企業の顧問とは仕事の仕方がかなり違うようです。

歴史の長い大企業の「顧問」は、会社のご意見版的な存在として長く関わることが大半。さらに言えば、社内で社長とか会長として君臨した人が、後継者に対するお目付け役のような形で関わったりします。

ところが、この記事で取り上げている顧問は、長く勤めた会社での人脈を別の会社の成長につなげることが期待される存在(先ほど書いたように、人生の先輩としてアドバイザーになることはあります)。

ゆえに、たとえば50代前半など、比較的若くして顧問になったほうが、顧問先にとっても、自分にとっても成果が出やすいでしょう。

冒頭に登場したDさんのような働き方が増えると、顧問として働くために人脈作りを意識する人が増えるかもしれません。こうした動きは、ミドルからシニア層に差しかかかる方々にとっても注目してほしいものです。転職ではなく顧問を目指す……そんな次のキャリアがあってもいいのはないでしょうか。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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