欧州危機はどこへ向かうのか--欧州大手銀行・経済調査総責任者に聞く
--現在のユーロをいったん解体し、少数の強国だけでユーロを再編することはありえますか?
ユーロの参加国は現在17カ国。可能性として、1カ国か2カ国、ユーロを離脱する可能性はあるが、その可能性は極めて低いと思っている。1つは、強い、大きな国にとって、小さい国が離れてしまうと、心理的な不安を起こす、ということ。もう1つは、小さな国の国民がユーロにとどまることを求めていることだ。
--とくに若年層の失業率は高い状況が続いています。政権は右傾化し、政情不安も心配です。
その点は、欧州の中でも国によって状況はかなり異なる。1つ言えることは、危機に直面した5カ国ではすべて政権交代が起きたということ。アイルランド、ポルトガル、ギリシャ、スペイン、イタリアでは政権交代が起こっている。さらに、アイルランドのような国では、国民が危機を乗り越えるんだ、ということで国民の支持が集まっている。
財政統合といった意味で、やはりタフなスタンスをとる政権が多くに国民に選ばれている。また、若年の失業率は国によって実情が異なる。スペインやイタリアは失業率が大変高いが、実際はユーロとはあまり関係がない。労働市場の政策の不備がこうした高い失業率を招いている。やはりリセッションが長期化すると、どうしても高失業はユーロのせい、ということになってしまいがちだ。
社会的な緊張が悪化する可能性があるとすれば、フランスが挙げられるのではないか。まだ危機的な状況ではないが、民族間の緊張が懸念される。移民が多く、とくに移民の若者の間の失業率が高い。この点はイタリアと少し状況が異なる。欧州の多くの国は日本と同様、高齢者が多い。高齢者が革命を起こすことはないが、フランスは若者が多い。社会的な混乱を招くポテンシャルはある。
--欧州の、とくに富裕層の間で資産を移すような動きはみられますか?
いいえ。リスキーな資産から広い意味でのキャッシュに資産を移している。問題は新興国もけっしてセーフヘーブン(安全資産)になっていないことだ。通貨でも同じことが言え、安全資産は米ドルか円。スイスフランももはやスイス中央銀行が主導的立場をとっていないので、安全資産とは言えない。投資家が自分の資産を守るオプションはほとんどないと考えて良いのではないか。
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