「しょせん他人事」描く炎上事件の"リアルな過程" 中島健人演じる弁護士がSNSの誹謗中傷と戦う

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そんな彼らに対して、被害者たち全員が毅然とした態度を取る。謝罪は当然だが、反省しているからといって、それで終わることはありえない。裁判手続きの詳細な過程を含めて、人を傷つけることの重さと、それによって加害者たち自身が受けるそれぞれの人生の負の影響を生々しく映し出す。

さらに中島健人の主演や、20時からという放送時間、ポップで楽しく見られる映像演出からは、スマホが日常の欠かせないツールになっている若い世代に向けて、SNSやネットにおける安易な発信や情報拡散への警鐘を鳴らそうとする意思も感じられる。

そんな本作だが、気になることもある。

さまざまな炎上ケースにおける、誹謗中傷などの発端となった加害者たちのリアルな姿とその末路をまざまざと映し出すことには、社会的意義があるだろう。

同時に、誰にでもある一度の失言や失敗を掘り起こし、意図的に大事件に仕立て上げるネット社会の“炎上仕掛け人”たちの悪意と、その存在自体の醜悪さや害悪をこそ、もっと描いてほしいと感じるのだ。

メディアにも責任がある

本作に登場するような誹謗中傷を、最初に発信または拡散した加害者たちには、悪意の有無や、理由の如何にかかわらず、当然ながら責任が生じる。

しかし、炎上仕掛け人をはじめ、それをネットニュースやトップニュースとして取り上げるポータルサイト、世の中ごととして報じるマスメディアにも責任の一端があるのではないだろうか。彼らはみな炎上という過剰なバッシング社会システムの構成要員になってしまっているのだから。

また炎上仕掛け人の中には、彼らなりの正義感や承認欲求から動く人や、愉快犯的な人たちのほかに、インプレッションを増やして収益を得ることを目的にするインプレゾンビも少なくない。

直接の加害者だけではなく、結果的に加担しているバッシングの構成要員の醜悪さこそ、ドラマのなかで描いてほしいと望む視聴者は少なくないのではないだろうか。そこから無益な炎上で苦しむ人たちが少しでも減ることを、大多数の良識ある世間の人たちは願っていることだろう。そして、その期待感をこのドラマに見いだしている気がする。

本作は後半に差し掛かっている。前半の事例を受けて後半ではどのようなネットトラブルを掘り下げ、社会へメッセージを投げかけることで、世論に訴えていくのか。視聴者に気づきを与えながら、共感と話題性をより高めていくことが期待される、社会的注目度の高いドラマだ。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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