一定以上の円高はない前提の「カジノ経済」の末路 株価暴落前の前提はついに崩壊してしまった

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この利回りが4.5%だったとすると、1万ドル投資すれば、1年後に10,450ドルになる。他方、1年後の為替レートが1ドル= e円であるとしよう。すると、これを円にすれば、10,450e円になる。 

簡単化のため、日本円での借入金利をゼロとすれば、これが借入額160万円を上回る条件(円キャリーが利益をもたらす条件)は、10,450e>1,600,000、つまり、e>153だ。

つまり、この取引は、「1年後の為替レートが1ドル= 153円より円高にならない」ことに賭けた投機なのである。

「1ドル=153円以上に円高にならない」というのは、いまにして思えば、ずいぶん強気な投機だ。

現実の為替レートはすでにこれより円高になってしまっているから、この取引を来年の7月まで持ち続けていれば、損失を被る危険性が高い。だから、いまのうちに取引を手じまってしまおうということになる。

これを「円キャリーの巻き戻し」と言う。円キャリーが巻き戻されると、ドルが売られ円が買われるので、為替レートは円高になる。そしてそれがさらに円キャリーの巻き戻しを呼び、さらに円高を招く。

実際の円キャリー取引の巻き戻しの実態についても、さまざまな推計があり、はっきりしたことはわからないのだが、すでにかなりの巻き戻しが起きていることは間違いないようだ。

リスク感覚が麻痺したミセス・ワタナベ

上で述べた条件は、より一般化できる。結論だけを述べると、日米金利差を4.5%とすれば、取引を始めたときの為替レートが1ドル=g円であれば、「1年後の為替レートが1ドル=0.956gより円高にならない」ことが円キャリーが利益をもたらす条件である。

しかし、為替レートが5%程度変化するのは、大いにありうることだ。そして、プロの集団であるヘッジファンドは、当然それを意識している。

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