「数値化するほど成果が出ない」日本企業の深刻盲点 「局地」と「短期」で相性が悪い数値化を有効活用

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しかし、積極的に数値化をしていくということは、つまり先ほどのような姿を目指すということなのです。極めて相性が悪いものにまみれる環境で、果たして人はいいパフォーマンスを発揮できるのでしょうか。

成果を出す人は「局地戦」と「短期戦」で勝負する

ではどうすればいいのか。キーワードが2つあります。「局地戦」「短期戦」です。

局地戦とは、限られた場所で戦うこと、勝てる場所に限定して戦うことを意味します。

先ほどもお伝えしたように、あまりに数値化された情報が多すぎる環境は適切ではありません。しかしながらビジネスにおいて生産性を上げたり業務改善したりするためには、数値化は必須です。

ゆえに重要なのは、「すべてを数値化する」のではなく「大切なものだけを数値化する」という発想です。物事の本質を捉えるエッセンシャル思考が必要になるでしょう。

たとえば私のような人材育成に従事する仕事においてエッセンシャルなのは、研修やセミナー受講者の行動変容です。ですから研修やセミナーの満足度を数値化することにあまり意味はありません。その研修を受講する前の行動、そして受講後の行動を数値化し、両者を比較することが重要ということになります。

短期戦とは、短い期間で決着をつける戦いを意味します。

ビジネスではできるだけ数値化した情報を使うべきです。しかし矛盾するようですが、できるだけ相性の悪いものとは距離を取りたい。ならばその“お付き合い”は短い時間で終わらせることが理想ではないでしょうか。

あなたが仕事で扱っている時系列データを定点観測するとしましょう。もし期間が1カ月くらいであればそれほど苦にはならない仕事でしょう。変化や傾向を見つけることも楽しいはずです。しかしこれを1年間ずっと続けなければならないとしたら、かなり億劫に感じる仕事になるのではないでしょうか。数値を使った定点観測や業務改善は短期で設計し、その間に結果を出してしまうことが鉄則です。

「局地戦」と「短期戦」という2つのキーワードに共通するのが、(くどいようですが)そもそも数値というものは人間との相性が極めて悪いという前提です。

扱わなければならない数値が増えれば増えるほど人間は不快になり、パフォーマンスが落ち、成果を得ることから遠ざかります。

数値化は良薬にもなれば毒にもなり、武器にもなれば凶器にもなります。積極的に数値化しているにもかかわらず成果が出ないと悩む人は、ぜひこの点を見直してみてください。

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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