新自由主義の復権 日本経済はなぜ停滞しているのか 八代尚宏著 ~本当の生活者・消費者重視の政策とは

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小泉改革が経済格差を拡大したように人々の目に映るのは、制度改革のペースが遅く、時代の要請に追い付いていないからではないだろうか。産業構造の変化を背景に、世界的に非正規雇用が増えた。しかし、日本の雇用のセーフティネットは昔ながらの正規雇用向けだけで、増加する非正規雇用には用意されなかった。既得権益者の抵抗もあったが、戦後最長の景気拡大局面で小泉政権が消費税増税を封印し必要な財源が確保できなかったから、必要なセーフティネットが構築されなかった。それゆえ改革が中途半端に終わったのではないかと評者は考える。

民主党は、自民党時代の政官財のトライアングルを打破し、生活者重視の政策を行うとして、政権交代を果たした。しかし、実際に政権に就くと、自民党政権時代と同様、既存の供給者の既得権を維持する政策を行っているようにも見える。本当に生活者、消費者を重視した政策を行うのなら、新古典派的な自由競争を重んじる政策が必要だ。野田政権は正念場にある。

やしろ・なおひろ
国際基督教大学客員教授。1946年大阪府生まれ。国際基督教大学教養学部、東京大学経済学部卒業。メリーランド大学でPh.D.(経済学)取得。経済企画庁、OECD事務局、上智大学国際関係研究所教授、日本経済研究センター理事長などを経る。

中公新書 840円 254ページ

  

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