ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド --経済が求める“幸せ”とは《宿輪純一のシネマ経済学》
ザ・ビートルズのメンバーのジョージ・ハリスンが58歳で亡くなってすでに10年。没後10年作品として、『タクシードライバー』『ディパーテッド』のアカデミー賞受賞監督マーティン・スコセッシが手掛けた音楽ドキュメンタリー映画。スコセッシはニューヨーク出身のハード系の監督というイメージがあるだけに少し意外感があったが、切れ味よくジョージの苦悩と生き方を描いている。
ジョージだけではなく、ビートルズ好きの方にはたまらないだろう。子供時代、ビートルズ時代、さらにはソロ時代といった未公開の映像を見ることもできる。しかし、彼はいつもつらそうだ。もちろん、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、ポール・マッカートニーらも登場する。
ジョージがビートルズのリードギターだったというと驚く人も多いであろう。そのようにビートルズ内部では評価は高くなく、リードギターであったが思うように弾かせてもらえない。アルバムでも1~2曲しか採用されない。そして、奥さんがエリック・クラプトンと結婚するなど私生活の問題もあった(そのとき、クラプトンが作った曲が「愛しのレイラ」である)。
ジョージはビートルズの一員として、物質的に満たされていても、精神的には満たされない。そして、インドへの旅などを通してインド哲学とインド音楽に陶酔していく。