トランプ陣営の攻撃犬になったベストセラー作家 「トランプ後継」バンス副大統領候補の素顔(上)
バンスはかつては「反トランプ」を主張していた。彼の反トランプの立場は2016年7月4日のリベラル派の雑誌『The Atlantic』に寄稿した「Opioid of the Masses(大衆のオピオイド)」に端的に表現されている。寄稿したのは、2016年の大統領選挙が行われている最中である。彼は32歳であった。バンス議員は次のように書いている。
真っ当なるトランプ批判を展開していた
「トランプが提案しているのは痛みから簡単に逃避することである。あらゆる複雑な問題に対して、彼は簡単な解決策を約束する。海外に進出した企業を罰することで雇用を取り戻すことができるという。ニューハンプシャー州の集会で彼は聴衆に向かって、メキシコとの間に壁を作り、麻薬カルテルを締め出せば、拡大する麻薬中毒を癒やすことができると語った。彼は、無差別に爆撃することで、アメリカを屈辱と軍事的敗北から救うことができると言う。トランプは自分の計画がどのように実行に移されるのか、決して計画の詳細を説明しない。それはできないからだ」
「大きな悲劇はトランプが指摘する問題が現実であることだ。彼が指摘する多くの傷を癒やすには、政府だけでなく、コミュニティの指導者と住民も真剣に考え、組織的な行動を取る必要がある。しかし、人々が一時的な高揚感に頼り、他人を攻撃している限り、国が必要な対応を取るのを遅らせることになる。トランプは“文化的なヘロイン”である。彼は一部の人を少しばかりよい気持ちにさせるが、人々を悩ましている問題を解決することはできない。やがて人々は、そのことに気が付くだろう」
「人々が、そのことにいつ気づくかわからない。数カ月後かもしれない。トランプが選挙で負けた時かもしれない。トランプの支持者が、トランプ政権の下でも、家庭が依然として戦場であり、新聞の死亡欄が若死にした人の名前で埋め尽くされ、アメリカンドリームへの信仰が揺らぎ続けていることに気が付くには数年かかるかもしれない。そんな時が来るだろう。私は、アメリカ人が多くの問題の解決に取り組むために、最大の力をもって、問題を見つめることを願っている。そのとき、アメリカは、『アメリカを再び偉大に(Make America Great Again=MAGA)』という安直なスローガンではなく、本当の薬を手に入れるだろう」
引用が長くなったが、バンスの痛烈な「トランプ批判」であり、正鵠を射た指摘である。2016年の大統領選挙の際のインタビューで、バンスは「自分は決してトランプ派ではない。トランプが好きだったことはない」と語っている。さらに「トランプに人気があるのは、彼に特別な資質があるからではなく、人々が既存のメディアや政治家、金融家に怒りを覚えており、それがトランプ支持に結びついている」と分析している。
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