学生が新卒一括採用にこだわる会社を忌避する訳 優秀な人材ほど中途採用の一本釣りに
ここで言う「社会的な要請」とは、若年層の失業を防ぐという企業の役割への期待です。ジョブ型雇用では、特定のジョブを担当するためのスキル・経験が要求されるので、新卒よりも経験者が有利です。未経験者の学生を積極的に採用する日本と比べて、ジョブ型雇用の欧米諸国では若年層の失業率が高まる傾向があります。
このように、人事部門関係者の間では「今後も新卒一括採用は維持される」という意見が大勢でした。しかし、筆者は向こう10年以内に新卒一括採用が崩壊すると予想します。
当の学生が望んでいない
第1の理由は、ジョブ型雇用が急速に浸透するからです。第2の理由は、当の学生が新卒一括採用を望んでいないからです。
今回、大学4年生にもヒアリングしたところ、新卒一括採用を前提とした就活のあり方を疑問視する意見が数多くありました。
「入社後の担当業務や能力の違いに関係なく、『大学卒』と一律に扱う現在の仕組みは、まったく悪平等です。私の周りでも意欲・能力が高い学生ほど、『なんでレベルが低い方に合わせなきゃいけないの』と不満です。新卒一括採用にこだわる企業には、『昭和の会社』という印象を持ってしまいます」(私立大学法学部)
「4月1日から『よーいドン』でみんな一緒に働けというのは、軍隊みたいでなんだか窮屈だし、気味悪いです。いろんな会社を見て、海外に出て経験を積み、自分なりに納得したときに働き始めるというのが理想だと思うのですが」(国立大学工学部)
こうした大学生に対して、企業側には「売り手市場で図に乗っている」(輸送機)という反発があるようです。ただ、少子化で今後も売り手市場が続くと予測される中、優秀な人材を採用しようと思ったら、学生の声を無視することはできません。
さすがに、政府・社会の雇用維持の要請を無視して、「新卒一括採用を停止します」と宣言する大手企業はないでしょう。しかし、ジョブ型雇用で中途採用が主体になり、将来の中核人材と期待する学生や若手社会人を一本釣りするようになり、新卒一括採用はなし崩し的に消滅していくというのが、高い確率で起こりうる近未来なのです。
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