イスラームから見た「世界史」 タミム・アンサーリー著/小沢千重子訳 ~人物描写、文化事象の記述で類書にない迫力

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 これ以来、ギリシア思想に基づくイスラーム哲学は衰退し、ムスリムは自然科学に対する関心を失った。著者は明言していないが、イスラームに学びながら、それにかわって自然科学を発達させたのはヨーロッパなのだ。この差こそ近代化の成功をめぐる明暗につながる。著者は、宗教改革を経たヨーロッパでは信仰と自然の解明は別物であり、別個の探究領域が一致する理由もないと人びとが考える訳を人物紹介とともに解き明かす。しかし、イスラームそのものに停滞の原因を見いださない。

むしろ、科学上の偉大な発見は、イスラームでは社会秩序崩壊の時期と重なっていた反面、西欧では長く崩壊していた社会秩序の回復期と重なったからだと分析を試みる。これは、イスラームの秩序最盛期に偉大な科学的発見をしながら、なぜに伝説的な停滞に陥ったのかを十分に説明していない。天才ガザーリーにイスラーム没落の全責任があるという結論にもなりかねない。とはいえ、事物の確かな叙述に加え、議論の枠組みが確かな好著というべきだろう。

Tamim Ansary
作家、米サンフランシスコ・ライターズワークショップのディレクター。アフガニスタン出身、サンフランシスコ在住。米国の複数の世界史教科書の主要執筆者。サンフランシスコ・クロニクル、ロサンゼルス・タイムズなどに寄稿。

紀伊国屋書店 3570円 685ページ

  

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