中島さんは、16時までの時短勤務を認められたうえで正社員として入社した。現在は、人事部門でアシスタント業務に就いている。「子どもに負担をかけてまで働くのは母親のエゴではないかと悩んだ時期もあったけれど、働きたい気持ちには替えられませんでした。このように働ける環境を整えてもらったのだから、子どもの成長に合わせて柔軟に働き続けたいと思っています」。
優秀な人材が働き続けられるように
副社長の横川泰之氏は「優秀な女性社員が、出産や育児を理由に能力を活かせる場にいられないケースをたくさん見てきて、いつかなんとかしたいと思い続けてきた」と語る。プロジェクトが立ち上がったのは、昨年、平沼さんを始めとする産休中の女性社員から「早く復職したいけれど保育園が決まらない」という訴えが重なったのがきっかけだ。それならば子どもを預かるシステムを会社が作ってしまおうと思い至ったという。
もともとスタイル・エッジには、全社員が参加する会議や懇親会に、子ども連れでの参加を認めてきた風土がある。平日に開催される幼稚園・小学校の行事への出席を勧める「キッズ行事推進制度」などもあり、「堂々と家族との思い出を作ってください」という社風だ。その背景には、気持ちが満たされたほうが、仕事にも精いっぱい向き合えるとの考えがある。
実際、オフィスの一画に託児スペースを設置することについては、懸念もあった。オフィス内を子どもが通るし、防音ガラスで遮断されているとはいえ、子どもの泣き声が漏れ聞こえることもある。社員の中には、子どもが嫌いな人、欲しいのに授からない人もいるかもしれない。社員間の公平性についても配慮する必要があった。それでも、会社としては優秀な人材が働き続けられる環境を整えることを優先した。そこには強い意思があった。ところが、実際に始めてみるとこうした懸念のほとんどは杞憂だったようだ。独身の男性社員も「子どもの姿に癒される」と言い、「将来妊娠するとしてもモデルケースを間近に見られて安心」と話す女性社員もいた。
「社員のライフスタイルは今後さらに多様化していくだろう。それぞれがベストを尽くせるよう柔軟に環境を整えていきたい」と横川氏。今後は、このプロジェクトを成功モデルとして、クライアントやほかの企業にもコンサルティングを行っていく予定だという。こうした会社が増えれば、待機児童問題やマタハラ問題、潜在保育士問題などを解消する糸口になるかもしれない。
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