三陽商会、「バーバリーなし」の苦しい前途 上方修正でも通期で減収減益、不安も顕在化
百貨店の決算などを見ても、全般的に衣料品の売り上げは鈍く、服が売れないのは、三陽に限った話ではない。1世帯の「被服および履物」の支出額(1カ月当たり)は、2007年の1万2933円から、2014年には1万1983円へ減少(総務省家計調査)。2014年4月、消費税が8%へ引き上げられて以降、消費者の財布のひもは固いまま。むしろ、駆け込み消費で売り上げが膨らんだバーバリーのようなケースは特殊、といえそうだ。
三陽は中間期までの好業績を受けて、通期業績予想も上方修正。売上高は期初計画の960億円から1000億円へ、営業利益は32億円から65億円へと上積みする。ただ、下期はバーバリーがなくなるので、通期で見ると減収減益となる。前期比では売上高が9.9%減、営業利益が36.4%減の見通しだ。バーバリーの後釜ブランドとなる、「マッキントッシュロンドン」、「ブルーレーベル・クレストブリッジ」向けなどへの広告宣伝費を当初予定より10億円積み増すことも、営業利益の下押し要因となる。
リニューアルする銀座店がカギ
今後については、直営店の「バーバリー銀座店」が、今年9月に「SANYO GINZA TOWER」としてリニューアルオープンを予定しており、その売り上げ動向が注目される。
急増中の訪日中国人にも「三陽のバーバリー」は人気で、銀座店における”爆買い”が三陽の業績を押し上げてきた。もっとも、リニューアルによって、店内のブランドはマッキントッシュロンドン、クレストブリッジなどに入れ替わる。銀座という好立地、海外向けにもアピールできる旗艦店で、新ブランドをいかに周知させて成長軌道に乗せられるか、今後の三陽の行方を占う重要なポイントとなる。
リニューアル後の同店の売り上げについて、「当面は以前に比べて7割程度に落ち込む」と、杉浦昌彦社長は慎重な見通しを示した。三陽は元々、冬物コートなど重衣料に強く、それはこれからも変わらない。バーバリーなしで、かき入れどきの秋・冬にどれだけ稼げるか、真価が問われることになりそうだ。
(撮影:尾形文繁)
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