「子持ち様への冷笑」かつて経験した私が思うこと 男性の育休取得率が3割到達の陰で生じる歪みの正体

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

政府は、男性育休取得率の目標として、2025年度に50%、2030年度には85%への引き上げを掲げています。2020年度に初めて10%台に乗ってからは、右肩上がりで伸びています。

厚労省は今回の急増理由について、育休制度の周知と育休取得の意向を確認する制度を2022年春から企業に義務付けたためと分析しています。取得を義務化するのではなく、取るかどうかを男性に尋ねることを義務化したわけです。

これによって、自分からは取得を言い出せなかった男性が、以前よりは気兼ねなく申し出ることができました。取りやすい環境づくりに向け前進したのは、間違いありません。

一方、来年4月からは育児休業給付(育休手当)は、両親がともに14日間以上の育休を取得した場合、手取り収入が育休前と同じ、つまり10割に引き上げられます。最大28日間ではありますが、育休取得をためらう理由が収入減である人にとっては、現行の67%から支援が拡充するわけで、大きな助け船になりそうです。

取得日数の多寡はともかく、より多くの男性が育休に踏み切ることは喜ばしいことです。政府が大号令をかけて、数値目標の実現に動いているのも、目指すべき到達点と時期を明示しないと、政策としての位置付けが曖昧になるという事情があります。まずもって、数字を引き上げるのは、政府の方向性として間違いとは言えないでしょう。

男性が「育休を取った後」の生活はというと…

しかし、こうした中、抜け落ちている視点があると感じます。それは、育休取得後の男性の働き方です。

育児を担うために、育休を取得し、復帰後も女性パートナーと分担したいのに、様々な理由で実現できない男性の事例は少なくないのではないでしょうか。女性は「時短勤務」を選択することもありますが、男性は元の働き方に戻ることが大半です。実際問題、育児を「分担」できるような働き方とは到底言えない人が多いと思われます。

その一方で、育休でキャリアが中断したことの“反動”が起きることもあります。育休でできた仕事上の“ブランク”を取り戻そうとして、育休前以上に必死で仕事に取り組む男性もいるかもしれません。

そうした背景には、日本社会ではいまだに男性のキャリア中断に極めて及び腰で、否定的な見方が根強いことがあります。

育休を取る男性に対し、ため息をつく同僚や上司を見たことがある人は少なくないはずです。育休を3カ月や半年取得する若い男性に対して「あいつは現場へのしわよせのことを考えていない」「いったい何を考えてるんだ」と裏でぼやく上司の話も、残念ながらそう珍しいものではありません。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事